【有馬記念】岡田壮史氏が語るメロディー誕生秘話

2021.12.22 05:00更新

まだ暗い中、調教に向かうメロディーレーン。その小さな体には関係者、ファンの夢が詰まっている(撮影・岩川晋也)

 GI馬にも負けず劣らずの人気を誇り、今回の有馬記念でも注目を集めているのがメロディーレーンだ。338キロのJRA史上最少馬体重優勝記録をもつ小さなアイドルは、生まれたときから小さかった? 同馬を生産した北海道新ひだか町の岡田スタッドで出産にも立ち会った岡田壮史さん(38)が当時を振り返り、グランプリ挑戦に向けてエールを送った。

 オープンの丹頂Sなど5勝の活躍をみせたメーヴェは、2015年に初めての種付けでオルフェーヴルと交配し、無事に受胎。翌年、岡田スタッドで出産のときを待っていた。しかし、そのおなかは、出産を控えた牝馬にしては小さすぎた。

 「ちょっと腹袋がふっくらした馬という感じでしたね。初子だし、小さな子が生まれるんだろうとは思っていました」と岡田さんは振り返る。出産は2月12日。生まれてきたのは午後8時過ぎと遅かったが、お産そのものは一瞬だったという。

 そうして生まれてきた子馬に、岡田さんは目を疑った。出生時の馬体重は50~60キロが標準とされるが、見た目はその半分にも満たないような大きさだったのだ。「計測はしませんでしたが、20キロもなかったと思います。人間が一人で持てたくらいですから」。これまでに経験したことがないミニサイズだった。

 すぐに、「この子は競走馬にはなれないのではないか」という考えが頭をよぎった。自力で立ち上がることすら不可能に見え、半ば諦めかけていたそのとき、子馬はスッと立ち上がった。のちにメロディーレーンと呼ばれる牝馬が起こした、最初の奇跡だった。

 その後の成長速度も他の馬と同じペース。目立って小さい馬であることに変わりはなかったが、母は愛情を注ぎ、他の馬とトラブルになることもなかった。育成を始めると体力面で同期に引けを取ることもなく、「小さいけどしっかりしているね」などと褒められることも多くなっていった。

 2歳になって調教を始めてからも、真面目な優等生。最初は体重の軽い乗り手を騎乗させたが、「体力があって背中も強かった」ため途中からは気を使うこともなくなった。その一方で、「脚も短いので乗っていても見ていてもスピード感がない。正直、本当にデビューできるのか最後まで半信半疑でした」という気持ちもあったという。

 そうした不安は、無事デビューしてからの走りで吹き飛んだ。340キロで未勝利戦を圧勝し、338キロで1勝クラスをレコード勝ち。牡馬相手の菊花賞でも5着に食い込んだ。数々の最少体重記録を更新しながら、ついにグランプリの舞台に立つ。1978年メジロイーグルの412キロを更新する最少馬体重出走となることは確実で、勝てば2009年ドリームジャーニーの426キロを大きく更新するだろう。

 「ここまできたことに驚きしかありませんし、本当にあのとき(出生時に)判断を間違えなくてよかったと思います。ファン投票(24位)で選出していただき、感謝の気持ちでいっぱいです」

 晴れ舞台を楽しみにする岡田さん。前走で350キロ台(354キロ)まで成長したメロディーレーンが、最大級の奇跡、驚きを与えてくれるかもしれない。

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 ■岡田 壮史(おかだ・たけふみ)1983年5月19日生まれ、38歳。北海道出身。岡田スタッドグループの岡田牧雄代表の三男で、2006年より岡田スタッド勤務。同グループの愛馬会法人・ノルマンディーオーナーズクラブ代表。

 ★この日のメロディー…小柄な馬体を弾ませながら、栗東坂路で4ハロン66秒3-15秒9。小気味いいフットワークで駆け上がった。約2カ月ぶりの実戦となるが、森田調教師は「間隔をあけて使ったほうがいいし、休み明けは前進気勢がある。状態は良さそう」とうなずいた。

 ★ベストバランス…メロディーレーンは小さくてもカイバはよく食べていたため、2歳時の育成段階で一旦調教を休ませて、体重を増やすことに専念させた時期があった。その効果で一時は400キロ近くまで大きくなったという。ところが「脂肪がついただけで、ただの太った馬になっていました」と岡田さん。調教を再開するとすぐ元のサイズに戻ったとのことで、骨格的にもベストなバランスで走っていると考えてよさそうだ。

 ★姉弟対決…今回は弟で菊花賞馬のタイトルホルダーとの初対決も注目される。「お姉さんほどではないですが、タイトルホルダーも生まれたときは小さな馬でした。それでも成長力が抜けていましたね。1歳の頃にはクラシックを意識したくらいです。牧場の期待通りにGI馬になってくれましたが、いまだにメロディーレーンの弟と呼ばれてしまうのはちょっとかわいそうかな」と岡田さんは苦笑いしつつ、2頭の競演を心待ちにしている。

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