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2020.2.14 04:59

【KEIRIN特観席】競輪の発展にも通じる野村克也さんの言葉

 「第35回全日本選抜競輪」(GI)は清水裕友の優勝で幕を閉じた。S級に再昇級した一昨年の正月、年男の取材で清水を訪ねたことがあったが、それから2年でタイトルを飾った成長スピードには驚くばかりだ。今大会の驚きはそれだけではない。日曜日だった2日目(9日)の入場者数は1万1617人。昨年末立川GPと500人余りしか変わらなかった。関係者の尽力が結実した結果だ。

 豊橋競輪の熱意と取り組みにスペースを割くつもりだったが、11日未明、巨星が旅立った。本紙専属野球評論家の野村克也さんの訃報。スポーツ界のみならず日本の偉大な指導者を突然失った喪失感にかられながらも、開催最終日を迎えた豊橋で関係者の取材に追われた。まず元ヤクルト投手の松谷秀幸に話を聞いた。「自分の頃は池山さんや首脳陣の岡林さん、八重樫さんと黄金時代の方ばかり。野村監督のID野球が浸透していました」。ヤクルトでの会社員時代を経て競輪選手となった今の礎がある。取材後、不本意な競走が続いた後輩の松井宏佑が近付くと、松谷は優しく語りかけた。野村さんの言葉のなかに「選手を育てるとは、自信を育てる」とあるが“イズム”は確実に、多くの人に継承されていく。

 楽天時代、本塁打王に返り咲き「野村再生工場」の代名詞の一人となった山崎武司氏も来場。「人としてどうあるべきかとご指導をいただきました」としのんだ。俳優で競輪評論家の伊藤克信氏は、90年代に日テレ系「ズームイン!!朝!」でのプロ野球イレコミ情報のヤクルト担当としてご記憶の方も多いだろう。「大功労者を失いました」と別れを惜しみ「視野が本当に広い。同じことでも野村さんが話すだけで説得力が違いましたね」。この言葉にハッとさせられた。一次予選で敗退の地元・金子貴志は、大会中も普及活動との葛藤を吐露したが「狭い範囲の認知ではだめ」と危機感を募らせる。野村さんが実践した「明確化」と「整備」こそ、競輪の発展にとっても重要であるだろう。

 メディアを大事にし、時にメディアに厳しかった野村さん。仮に今の競輪界をどんな眼で見て、どう論じただろうか。心よりのお悔やみを申し上げるとともに、思いをはせた。(曽山貴之)