中央競馬:予想予想

2021.9.4 12:56

【居酒屋ブルース】日曜新潟11R

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 【日曜新潟11R・新潟記念】

 休みの日、ひいきの居酒屋のカウンター席で遅いランチを食べ終えて一息ついていると、賄いを乗せたトレーを持った桃ちゃんがカウンター席に座った。もちろん、ソーシャルディスタンスを保つ2メートル以上の間隔をあけ、2人の間には透明アクリルパーテーションもある。

 「読みましたよ、高橋三千綱さんの追悼コラム。よかったです」

 桃ちゃんが言うのは、8月28日付のサンケイスポーツに載った、僕が書いたコラム「甘口辛口」のことだ。

 「初めて競馬場で見たレースが、クラシックレースを勝つ前のシンザンだなんて、私も羨(うらや)ましいと思いました」

 説明するより読んでもらった方が分かると思うので、少し長いがここに掲載する。

 ◇◇◇

 2013年1月、高橋三千綱さんが取材場所に指定したのは東京・府中の大國魂神社だった。前年6月に食道がんの内視鏡手術を受け、糖尿病と肝硬変も患って頬のこけた姿は、まるで剣豪のよう。写真撮影に臨む、りんとしたたたずまいに圧倒された。近くにある東京競馬場は芥川賞作家の思い出の場所だ。「中学から高校まで府中の近くにいたので、遊びがてらよく行ってました」

 初めて馬券を買ったのは16歳のとき。1964年のスプリングSに出走するため関東初遠征だった、後の3冠馬シンザンを見てこう思ったという。「虹に包まれたような輝きがある」。その単勝を200円購入。馬券は2100円の現金になった。

 「うれしかったなあ。場内の遊技場で遊ばせていた4歳のいとこのところに戻ったら砂場にポツンと立っていた」。〈私が勝った馬券を手にして、「おーい、ぼうず」と呼ぶと、少年はぶつかるようにして走ってきて、私の胸の中にとび込んだ。この子も、この日のことは一生忘れないかもしれないと私は思っていた〉。82年、夕刊フジのエッセーにそうつづった。

 「あの連載エッセーは競馬、マージャン、映画などに誘う入り口になってくれた」と大ファンの友人は言う。小欄は8年前の取材が強烈だけに、高橋三千綱さんといえば競馬。シンザンとの出会いを聞いたときに抱いた羨望は忘れられない。

 東京競馬場の定位置は1コーナー。「ゴールを駆け抜けたあと、命からがらという感じで来るんです。何とも言いようのない、胸が締め付けられる思いがします」。8月17日、73歳で永眠。ターフの空の下、馬券を握りしめて競馬を見る三千綱さんを思い浮かべた。合掌。

 ◇◇◇

 引用したのは「少年と見たシンザンの思い出」というエッセーの一文。コラムに出てくる高橋三千綱さんの大ファンは「あのエッセーは印象深いもの。4歳のいとこを競馬場に連れていく経緯が、さすがは純文学作家という感じですね。いとこの少年も60歳を過ぎていますね」と話していたよ。

 「ターフの空の下というのは、競馬場の空の下という意味ですね」

 うん。「九月の空」という作品で芥川賞を取っているのと、週刊Gallopで高橋三千綱さんが連載対談のホストを務めたことがあって、そのときのタイトルが「ターフの空」。それで「ターフの空」という表現をコラムにも使ったわけ。

 「競馬を愛する作家って多いんですか?」

 昔から競馬愛好家は多いね。実は最近、競馬アンソロジーを読み直しているんだ。面白い作品が多いよ。芥川賞・直木賞の創設などの業績を残した、作家であり編集者であり馬主でもあった菊池寛が書いた「我が馬券哲学」にこんな一文があるんだ。

 〈一、馬券は尚禅機の如し、容易に悟りがたし、たゞ大損をせざるを以て、念とすべし。〉

 「鈴木さんは先週、2つの重賞とも外したので胸にしみるでしょうね」

 キーンランドSの本命ロードアクアは13着で、勝負レースの新潟2歳Sの◎スタニングローズは5着…。ロードアクアは正攻法の競馬をして負けたから納得がいくけど、スタニングローズの方は想定していた位置取りよりだいぶ後ろからの競馬だったから納得がいかない。鞍上があの位置から大外を回して差し切れると思っていたら問題だよ。Gallopの成績欄に載っている松山弘平のコメントは「スタートでつまずいて、いいポジションが取れませんでした」。勝ったセリフォスのスタートも遅かったけど、こっちは1番枠を利して経済コースのインからロスなくゆっくりポジションを上げられた。内外の差といえばそうなんだけど…。LINEの人も先週は当たらなかったというから、すごく申し訳なくて。

 「お気の毒さまです。私は新潟2歳Sで本命にしたルメールさま騎乗のアライバルが2着に来てくれて、なんとかプラス」

 おめでとう。さすがは馬券センスのある桃ちゃんだ。

 「でも、赤帽は一頭も馬券に絡まず、新潟2歳Sで勝ったのは白帽の馬。“白のサイン”に逆戻りしちゃいました」

 ここで少し説明しよう。

 居酒屋ブルースでは宝塚記念の回から白いアジサイの写真を載せ始めると、白帽の馬が馬券に絡むという“白のサイン”が頻発したが、クイーンSから一転して“白のサイン”はまるで出なくなっていた。

 その後、居酒屋ブルースの冒頭に載せた写真は、東京五輪の開会式当日にブルーインパルスが描いた五輪マークの一部。それが赤色だったことで、桃ちゃんが「今回から“赤のサイン”に移ろうってこと?」と言ってきたのだった。すると、関屋記念では赤帽のロータスランドが勝利し、その翌週の北九州記念では同じく赤帽のファストフォースが2着に来た。

 ところが、先週の日曜日の重賞では赤帽は来ず、白帽のセリフォスが新潟2歳Sのタイトルを取ったのであった。

 「相変わらず、これまでのあらすじを語るナレーションみたいですね」

 初めて居酒屋ブルースを読んだり、久しぶりに読んだりしたユーザーの皆さんに伝えないとね。

 「はいはい」

 そういう流れになると思ったから、今週も冒頭にブルーインパルスの写真を載せておいたよ。

 「今週もこりずに赤帽を狙おうっていう魂胆ですか?」

 そういうわけじゃないけどね。

 「そろそろ予想に入りましょう」

 そうだね。

 「先週の勝負レースでは、私の本命アライバルが鈴木さんの本命に先着。ということで、今週の予想の披露も鈴木さん、私の順です。ではどうぞ。勝負レースは新潟記念と小倉2歳Sのどちらですか?」

 新潟記念にするよ。でもその前に小倉2歳Sの予想も少々。

 本命はスリーパーダ。

 今回と同じ舞台で行われたデビュー戦の内容が良かった。好位から直線で外に出ると、ムチひとつ入れられることなく楽々と抜け出して快勝。鞍上の福永祐一いわく「前に壁を置けず、うまく(脚を)ためきれなかった」という状況での、この強さ。鞍上はさらに「クラスが上がった方が流れ的にに競馬はしやすいと思います」と。レースを1回経験したことで競馬への慣れが見込めるし、ペース次第では走破時計は詰められるはずだ。

 なにより血統がいい。オークス馬で桜花賞2着のシンハライトの半妹で、この牝系には8月15日のオープン特別のUHB賞を勝って復活をアピールしたアヌラーダプラがいるように勢いもある。父ミッキーアイルといえば、去年の小倉2際Sを勝ったメイケイエールと同じ。これもいい。昨年、ノーザンファームの生産馬による2歳重賞の連勝が始まったのはこの週から。札幌2歳SのソダシからホープフルSのダノンザキッドまで。その後、この世代の重賞連勝はチューリップ賞まで続いて19連勝を記録したんだよ。今年の2歳重賞もこの週からノーザンファーム生産馬の快進撃が始まる予感がする。

 ◎スリーパーダから○ソリッドグロウ、▲ナムラクレア、△インプロバイザー、ショウナンマッハ、プレスレスリーに流す馬券を買ってみたい。

 さて、勝負レースの新潟記念だ。

 こちらの本命はクラヴェル。

 さっき紹介した菊池寛の「我が馬券哲学」の一文にはこういうのもある。

 〈一、甲馬、乙馬人気比敵し、しかも実力比敵し、いずれが勝つか分らず、かゝる場合は却って第三人気の大穴を狙うにしかず。〉

 エプソムCを勝って臨むザダルと函館記念を勝って臨むトーセンスーリヤが、菊池寛のいう甲馬と乙馬に相当するだろう。ただし、ともに57.5キロのトップハンデを背負う。しかも、どちらも前走から1.5キロ増。2頭に比べると、中京記念3着から臨むクラヴェルは前走と同じ52キロで出走できる。

 ここ2戦ともメンバー最速の上がり3ハロンの末脚を使って馬券に絡んでいるように、主戦の横山典弘が我慢する競馬を覚えさせたことが、ここに来て板についてきた感がある。52キロの軽ハンデを生かして、堅実に末脚を伸ばすとみている。

 小倉2歳Sのスリーパーダと同じように、こちらも勢いのある牝系だというのも本命にした理由のひとつ。アルゼンチンから輸入された曾祖母ポトリザリスから広がった牝系は、祖母ディアデラノビアや母ディアデラマドレだけでなく、ドレッドノータスやサンマルティンなど活躍馬が出ているからね。桃ちゃん、よろしく。

 「新潟記念はラインベックが本命です。友道調教師の『心肺機能の良さが動きに連動するようになった。先行できれば』という言葉を信じれば、良血開花ということ。こっちの母はアパパネですよ。良血といったら、こっちの方が上でしょう」

 小倉2歳Sは?

 「函館の新馬戦を勝って小倉に遠征するソリッドグロウが本命です。2着に7馬身差をつけたデビュー戦は圧巻のひと言。この馬もノーザンファームの生産馬ですね。関東馬初の小倉2歳S制覇に期待します。鈴木さんの新潟記念の印と買い目がまだです」

 ◎⑬クラヴェル
 ○⑰トーセンスーリヤ
 ▲⑪ラインベック
 △①サトノアーサー
 △②ザダル
 △⑤リアアメリア
 △⑥パルティアーモ

《3連複》
 ⑬-⑰-①②⑤⑥⑪(5点) 各600円
 ⑬-⑪-①②⑤⑥(4点) 各400円
 ⑬-②-①⑤⑥(3点) 各500円
 ⑬-①⑤⑥-①⑤⑥(3点) 各300円

《馬連》
 ⑬-②⑪⑰ 各1000円

 なにニヤついているの?

 「赤帽のリアアメリアとパルティアーモに印がついているな、って。小倉2歳Sも、人気だから当たり前だけど赤帽のショウナンマッハが△。こんなときは裏目が出て、先週みたいに“白のサイン”が浮上したりして…。でも白帽のサトノアーサーとザダルにも印が回ってる(笑)。今週も紅白に注目ですね」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

主な登場人物

ミチヤ…ひいきの居酒屋の店主。ずぶの素人から、どこまで競馬に興味を持ってくれるか

桃ちゃん…ひいきの居酒屋のアルバイト。馬券のセンスが抜群の競馬女子(UMAJO)。ちなみに、居酒屋ブルースのUMAJOは、酒場のあすピー→バイトのマヤ姉(ねえ)→桃ちゃんと変遷

LINEの人…謎の人物

カズマサ…夢の中の(?)ひいきの居酒屋の店主。馬券はデータ派。この居酒屋ブルースの世界から去っていった

琢磨…夢の中の(?)ひいきの居酒屋のスタッフ。好不調の波はあるが、馬券が当たると好調が続く。カズマサ同様、この居酒屋ブルースの世界から去っていった

もりやさん…夢の中の(?)ひいきの居酒屋の常連客。競馬とお酒が大好き。カズマサ、琢磨と一緒にこの居酒屋ブルースの世界から去っていった

鈴木学(すずき・まなぶ) デジタルメディア推進担当部長 

レース内容・騎手・厩舎

堅め

3連複

プロフィル

第1次東京五輪世代(第2次は2021年に誕生)。1993年2月にサンスポの競馬担当となり、2年間のブランク(運動部デスク)を挟んで競馬にどっぷり漬かっている。現場記者時代は紙上で予想コラム「鈴木に学べ」を連載も、たまに「鈴木が学べ」に。

予想スタイル

「3連複の軸馬」を◎にしている。3連単の期待値は3連複の6倍だが、人気馬が1着だと6倍以下になることが多い。人気馬を軸にするのなら3連複の方が得という考え。

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