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【新潟11R・新潟記念】
「どうしたんです!?」
ひいきの居酒屋のカウンター席に座ったとたん、おしぼりを持ってきたアルバイトの桃ちゃんに驚きの声を上げられた。
他の客がいなくなる時間を見計らってランチを食べに行った休みの日のことだ。
「顔が紙のように白いですよ」
ちょっと飲みすぎちゃってね。
「ちょっとじゃないでしょ」
そうかも。まだ体内にアルコールとアセトアルデヒドが残っているよ。きのう、友人と2人で家飲みしたんだ。友人がコロナにかかりたくないという理由でお店では絶対に飲まないから、家で飲むことにしたんだよ。以前に2度、その友人とコロナ対策で公園で外飲みしたら2度とも雨だったこともあって3度目は屋根のあるところで、ってなってね。今回は晴れだったけど、クーラーが効いていて快適だった。友人とはいつも昼のみ。今回は電車を避けて自転車でやってきた友人と、午前11時過ぎには飲み始めたよ。
今回は「ヘイジーIPA祭り」。濁ったビールのことをヘイジービールっていうんだけど、その中でもIPAだけを取りそろえて飲み比べをしたんだ。IPAというのは、前も話したけどインディア・ペール・エールの略称で、ホップをたくさん使った苦くてアルコール度数の高いペール・エールのこと。ヘイジーIPAは今、クラフトビール好きの間では一番はやっているんじゃないかな。
まずは、アメリカのブルワー(醸造所)、ジャイガンティックの「スマックダブヘイジーIPA」で乾杯。黄色いヘイジーで、苦みしっかりのドライ系IPA。モルトの香りも良かったね。ジャイガンティックはずっと飲みたかったので、うれしかったなあ。
続いてアメリカのメルヴィンというところの「クラウディ5000」。黄色いヘイジー。ヘイジーらしい香りだけど甘さはなくてすっきり系。苦味もしっかり残るビールだったよ。ヘイジーはIPAでも苦みが少ないものが多いけど、「スマックダブヘイジーIPA」も「クラウディ5000」も苦みがしっかり利いているから好みだね。
3本目の東京エールワークスの「ザ・ホップ・サムライ・インペリアルIPA」も苦みしっかりだった。ライ麦を使ったビールで、名前はライと侍をかけているわけ。東京エールワークスのビールも初めて飲んだけど、濃いヘイジーWIPAで苦みしっかり、モルト感しっかり。アルコール感も強かったね。ちなみにアルコール度数は8.5%とやっぱり強め。
4本目は宮城のブラックタイドブルーイングの「オールトゥゲザー」。オールトゥゲザーは、米国のアザーハーフというブルワーが新型コロナの治療で奮闘している医療従事者のため、レシピを無料で全世界のブルワーに公開。それに賛同して全世界で造られた「オールトゥゲザー」の売り上げの一部を医療従事者へ寄付するというあっぱれなビールなんだ。他のブルワーの「オールトゥゲザー」も何本か飲んだけど、これは薄めのヘイジー。甘さがなくてすっきり系。苦味もほどほど。おいしかったよ。ブラックタイドのビールは今回、「ワンアンドオンリー」というのも飲んだ。爽やかな香りのモルティーなIPA。コクも苦味もあって、いい感じだったよ。ダービー馬のワンアンドオンリーは、ブラックタイド産駒じゃなくてハーツクライ産駒だけどね。
米国ハワイにあるマウイブルーイングの「Sターンズ」というビールもよかった。甘みなくすっきり系のヘイジーIPAで、友人いわく「うまい純米酒みたい」。マウイブルーイングの「ビッグスウェル・ハワイ」は、村上春樹のお気に入りらしいよ。
米国リヴィジョンの「ヘイジーライフ」も奥多摩にあるバテレの「リッカ」も米国ストーンの「タンジェリンエクスプレスヘイジーIPA」もよかった。それと…。
「ちょっと待った! 一体いつまでビールの講釈が続くんですか?」
ヘイジーはあと2本だけど、それでも足りず、以前に買っておいた大阪・箕面ビールの「W-IPA」3本と「ペールエール」1本、埼玉・川越のコエド「マリハナ」というセッションIPAを1本飲んだ。それでも話が尽きなかったから、コンビニへ行って軽井沢ブルワリーの「軽井沢エール」などを買ってきた。このときはもう、だいぶ酔っぱらっていたので味なんて覚えてない。
昼飲みのはずが、途中で友人が「夜に自転車での酒酔い運転で帰りたくない」と言うから、夜飲みに突入。終わったときは日が変わっていたかな。2人で飲んだビールは22本。ハナ肇とクレイジー・キャッツの「五万節」という歌詞の中に「飲んだビールが5万本」というのがあるけど、あれはだいぶ誇張しているね。20歳から70歳まで毎日2本飲んだとしても3万6500本だもん。
「400字詰め原稿用紙にして6枚目に突入したので、もうやめてください。これだけ長いと鈴木さんのやけ酒話に付き合ってくれるユーザーは一人もいなくなるか、飛ばし読みされますよ」
やけ酒ってどういうこと? 友人と飲んだ話をしているだけじゃない。
「鈴木さんは、これまでも競馬の本題に入りたくないと、こうやってお酒の話とか別の話ばかりするじゃないですか。『オールトゥゲザー』とか村上春樹さんの好きなビールとか、へぇ~と思う話もありましたが、先週も負けたからといって、やけ酒話には付き合いきれません。2重賞とも当てると宣言していた先週の結果はどうでしたか?」
……。
「言わないのならこっちが言います。新潟2歳Sは、本命にした7番人気のハヴァスが9着。勝負レースに指定したキーンランドCは、圧倒的1番人気のダイアトニックを本命にしたら16頭中15着と惨敗でした。これでやけ酒と言わずしてなんと言います?」
二日酔いだし、ぐうの音も出ないよ。
「あれだけクラフトビールの講釈を垂れていたのに何を言ってんだか…」
すみません…。
「じゃあ、そろそろ競馬の話に移っていいですか? ランチの後片づけがあるし、おなかが空いているので早く賄いのご飯を食べたいし、ちゃっちゃと終わらせましょう」
はい…。
「勝負レースは、新潟記念と小倉2歳Sのどっちですか? 小倉2歳Sは10頭立てと少ないから当然、新潟記念ですよね」
はい…。
「じゃあ私から。小倉2歳Sは武豊さんのメイケイエールが本命です。エルムSで『先週はルメールさんが乗ったコントラチェックを鈴木さんが本命にして駄目だったので、今週はルメールさんが来そうな気がします』と言ってタイムフライヤーを本命にしたら1着。先週は武豊さんが乗ったダイアトニックを鈴木さんが本命して駄目だったので、今週は武豊さんが来そうな気がします」
ちょっとイヤミが入っているような気がするけど、まあいいか。
「新潟記念の本命はブラヴァスです。2着だった七夕賞でも本命にした馬。馬も私もリベンジです。今回と同じ舞台の新潟大賞典は54キロのハンデで4着。今回はハンデが1キロ重くなりましたが、馬が成長しているので大丈夫。堅実さが売りのこの馬が少なくとも連対は確保するはずです。もちろん、勝ってくれるのが一番ですが…。さあ、鈴木さんの番です」
まずは小倉2歳Sの予想を少々。今回ただ一頭出走する外国産馬のフリードを狙ってみるよ。なんといっても前走のデビュー戦で1分7秒5という、芝1200メートルの2歳日本レコードをたたき出した馬だからね。強調できるのは、その前日に行われた2歳オープン特別のフェニックス賞より0秒4も速いこと。競り合ってくる馬さえいなければ、この馬の逃げ切りは濃厚だと思っているよ。
「そう簡単に逃してもらえますかね」
そこをなんとか…。
◎フリードから、○フォドラ、▲メイケイエール、△モントライゼ、アールラプチャーに流す馬券を買ってみたい。
「勝負レースの新潟記念は?」
人気になりそうだけど、3歳のワーケアが本命。
「ルメールさんですか」
うん。札幌リーディングが確定しているからというわけじゃないと思うけど、この馬のために夏の拠点の北海道を離れて新潟で乗るんだから鞍上は勝負になると思っているはず。
「でも、ルメールさんて先週、3年半ぶりだかに土日とも勝てなかったんですよね」
あれだけのジョッキーが2週続けて駄目駄目ってことはありえない。そういう意味でも、ここは狙い目だと思うよ。
「鞍上だけでは説得力がありません」
桃ちゃんだって、メイケイエールの本命の理由は説得力がないけど…。
「何か言いました?」
いや…。これから能書きを垂れようと思っていたんだよ。ワーケアは、デビューから5戦して4着以下に敗れたのは日本ダービーの8着だけ。これも皐月賞を回避して弥生賞2着からのぶっつけ本番だっただけに仕方ない部分はあると思っている。
ワーケアがデビューから連勝で勝ったアイビーSは、これまでクロノジェネシス、ソウルスターリング、グラスワンダーが勝っている出世レース。ワーケア自身もその後、GIホープフルS3着、GII弥生賞2着と高いレベルで活躍している。3歳秋は普通、セントライト記念か神戸新聞杯で始動するものだけど、手塚貴久調教師によると、ルメールが「左回りの方がいい」と言っていることもあって新潟記念で始動することになったようだ。2年前にも、ここで始動した3歳馬がいたよね。
「ブラストワンピースですね」
1番人気に応えて勝ったよね。ブラストワンピースのハンデは54キロだったけど、ワーケアは重賞勝ちがないぶん、53キロで出走できる。人気を分け合いそうなブラヴァスより3キロも軽いし、重賞未勝利のピースワンパラディ、ジナンボーと比べても2キロ軽い。カデナとは5キロ差もあるよ。
「本質的にベスト」と調教師が言う2000メートルなら、好勝負になるとみた。
おいしいランチを食べて酒も抜けたから帰るよ。印は週末の「居酒屋ブルース」を見てね。
「てことは、金曜日に来ないんですか?」
ごめん。ちょっといろいろあって忙しくてね。来週は必ず金曜日に来るから勘弁して。
「今週も2重賞とも外れて、やけ酒による二日酔いで来るのだけは勘弁してください」
馬券を当てて、気持ち良く秋競馬に突入したいよ。
◎⑪ワーケア
○⑰ブラヴァス
▲③ピースワンパラディ
△②アイスバブル
△⑤ジナンボー
△⑬ゴールドギア
△⑭カデナ
《3連複》1頭軸流し
⑪-②③⑤⑬⑭⑰(15点) 各600円
《馬連》
⑪-③⑰ 各500円
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
主な登場人物
ミチヤ…ひいきの居酒屋の店主。ずぶの素人から、どこまで競馬に興味を持ってくれるか
桃ちゃん…ひいきの居酒屋のアルバイト。馬券のセンスが抜群の競馬女子(UMAJO)。ちなみに、居酒屋ブルースのUMAJOは、酒場のあすピー→バイトのマヤ姉(ねえ)→桃ちゃんと変遷
カズマサ…夢の中の(?)ひいきの居酒屋の店主。馬券はデータ派。この居酒屋ブルースの世界から去っていった
琢磨…夢の中の(?)ひいきの居酒屋のスタッフ。好不調の波はあるが、馬券が当たると好調が続く。カズマサ同様、この居酒屋ブルースの世界から去っていった
もりやさん…夢の中の(?)ひいきの居酒屋の常連客。競馬とお酒が大好き。カズマサ、琢磨と一緒にこの居酒屋ブルースの世界から去っていった
プロフィル
第1次東京五輪世代(第2次は2021年に誕生)。1993年2月にサンスポの競馬担当となり、2年間のブランク(運動部デスク)を挟んで競馬にどっぷり漬かっている。現場記者時代は紙上で予想コラム「鈴木に学べ」を連載も、たまに「鈴木が学べ」に。
予想スタイル
「3連複の軸馬」を◎にしている。3連単の期待値は3連複の6倍だが、人気馬が1着だと6倍以下になることが多い。人気馬を軸にするのなら3連複の方が得という考え。