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2022.3.1 05:00

【さらばホースマン・特別編】藤沢和雄・蛯名正義スペシャル対談~後編

長きにわたって日本競馬のトップを走り続けてきた藤沢和元調教師(左)は、蛯名正調教師(右)ら新世代にこれからの競馬界を託した

長きにわたって日本競馬のトップを走り続けてきた藤沢和元調教師(左)は、蛯名正調教師(右)ら新世代にこれからの競馬界を託した【拡大】

 JRA史上2位の1570勝を挙げて先週で定年した藤沢和雄元調教師(70)と、1日から厩舎を開業した蛯名正義調教師(52)=美浦=のスペシャル対談後編。日本を代表する名トレーナーから、次世代へバトンタッチのメッセージを贈った。(取材構成・内海裕介)

《前編》はこちら

 --2月28日で34年間の調教師生活を終えた藤沢元調教師から蛯名さんはじめ後輩たちにメッセージは?

 藤沢和雄元調教師(以下藤沢) 「難しいのは1頭、1頭馬は違うし、パターンはないということ。蛯名調教師がどんなに頑張っても、もうステッキで気合入れるわけにはいかない。レースは騎手に乗ってもらわないといけないし、普段は厩務員さんに運動してもらわないといけない。その辺を上手にやるのが仕事と思うからね。今までは(騎手として)競馬でがんばってくれていたと思うけど、今度はそこへ持っていくのが仕事。今は情報もたくさんあるし、若い調教師は楽しいと思いますよ」

 --蛯名さんは調教師を目指すことを決意して4年間、藤沢さんに付いて学んできた

 蛯名正義調教師(以下蛯名) 「1頭1頭ていねいに向き合うこと。藤沢厩舎で研修させてもらい、つくづくそういうことだと思いました。『お前、本当に4年間見てたのか?』といわれないようにしないと」

 藤沢 「私を見てきたというけど、私だってわからないんでね。でも見て何を感じるかですよ。なかなか同じパターンじゃないからね」

 --蛯名正調教師の研修中、藤沢和厩舎では1600メートルを中心にGIを6勝したグランアレグリアという名牝も誕生した

 蛯名 「このクラスの馬はこういう風にするとか、馬についてはもちろん、レースに挑む気持ちや姿勢の部分が一番重要だということを見せてもらえた気がします」

 藤沢 「あれくらいの(強い)馬がスピードで2000メートルを押し切れないかということで(大阪杯と天皇賞・秋に)チャレンジさせてもらいました。運悪く2回とも雨が降って、速い馬場じゃなくなって少しだけ負けたけど、マイラーで2000メートルに向かっていくことは、サラブレッド全体の血統を考えても一番大事なことだと思います」

 --いよいよ開業する蛯名正義厩舎にはダービーを勝ってほしいという声も大きい

 蛯名 「世界中どこでも、競馬はダービーと名のつくものを目指して行われているし、生産者もオーナーも関係者もそれを目指しているものなので。騎手としてたどり着けなかったけど、何とかたどり着ければ」

 藤沢 「私の最初のダービー出走は蛯名騎手が権利を取ってくれたんですよ(1989年青葉賞2着ロンドンボーイ=ダービー22着)。いい感じと思っていた馬でも勝たせてもらえない難しいレースだったから、レイデオロで勝った(2017年)ときは余計にうれしかった」

 蛯名 「本当に長い間、ありがとうございました。これからも家に押しかけて、馬のことを聞かせてもらったり、厩舎に遊びに来てもらえたらうれしいです」

 藤沢 「いやいや、自分のところにいた馬を応援して、うまくいかなくて調教師にクレームをつけたらまずいからね(笑)。馬券はみんなの新聞の印を見て買うようにします。当たらなかったら会社に電話するので、いい取材をしてくださいよ(笑)」

 ★調教師で悲願ダービー…騎手としてJRA通算2541勝し、GIも26勝した蛯名正調教師だが、どうしても勝てなかったのが日本ダービーだった。25回挑戦して2着2回、3着2回。特にフェノーメノで臨んだ2012年は、先に抜け出したディープブリランテにハナ差まで詰め寄ったが涙をのんだ。ファンの間では何とかダービーVをの気持ちが強く、調教師として悲願成就を願う声が上がっている。

 ★管理馬の多く蛯名正厩舎へ…JRAの調教師は満70歳の2月で定年を迎える。藤沢和調教師は先週のラストウイークに2勝を加え、歴代2位のJRA通算1570勝に到達。管理馬の最後の出走となった中山記念は3頭出しでレッドサイオンが9着、コントラチェック10着、ゴーフォザサミット15着で調教師生活を締めくくった。管理馬の多くは1日に開業した蛯名正義厩舎に引き継がれる。

■藤沢 和雄(ふじさわ・かずお)1951(昭和26)年9月22日、北海道生まれ、70歳。実家はテンメイ(78年天皇賞・秋)などを生産した藤沢牧場。88年に美浦で厩舎を開業。93年マイルCS(シンコウラブリイ)での初制覇を皮切りに昨年のマイルCS(グランアレグリア)までグレード制以降で最多のJRA・GI34勝。2月28日に定年により引退した。JRA通算1570勝は尾形藤吉元調教師に次いで史上2位。重賞は126勝。

■蛯名 正義(えびな・まさよし)1969(昭和44)年3月19日、北海道生まれ、52歳。87年騎手デビュー。同期に武豊騎手らがいる。史上4位となるJRA通算2541勝(重賞129勝、GI26勝)。21年に調教師試験に合格し、同2月末で騎手を引退。3月1日から美浦で厩舎を開業。

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