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2021.12.22 04:59

【矢作芳人調教師 信は力なり】パンサラッサと盛り上げたい

福島記念を4馬身差で逃げ切ったパンサラッサ(左)。グランプリでも展開の鍵を握る存在だ

福島記念を4馬身差で逃げ切ったパンサラッサ(左)。グランプリでも展開の鍵を握る存在だ【拡大】

 パンサラッサを初めて見たときの印象は「ロードカナロアらしくない馬だな」。明らかに母の父モンジューを筆頭にした母系のスタミナ色が出ていると感じた。しかし、調教を進めていくと、ゲートの出とダッシュが鋭い。それでデビュー戦は1600メートルを使ったが、その後は第一印象を重視して2000メートルを中心にローテーションを組んだ。この選択は間違いでなかったように思う。全4勝が2000メートル。2着も4回中3回が2000メートルであり、心肺機能が高い。カナロア産駒としてはスタミナ豊富な印象だ。

 ただ今回の有馬記念では距離が2500メートルに延びる。まだ成長を続けているこの馬の伸びしろに期待しているが、距離は未知数、メンバーは超強力。グランプリ3連覇のクロノジェネシスや強力3歳馬の筆頭エフフォーリアは世界レベルであるし、人気者メロディーレーンと菊花賞馬タイトルホルダーの姉弟や引退戦となる古豪キセキもいる。力をつけている段階のパンサラッサには大変厳しいレースとなるだろう。

 それでも、彼のスタートとスピードがあれば主導権を握って見せ場を作ることはできると思う。しっかりとした逃げ馬が速いペースで逃げれば、レースは引き締まる。有馬記念は競馬ファンの誰もが夢を託すレース。みなさんに喜んでいただけるように、パンサラッサと盛り上げたい。

 コントレイルに続いてラヴズオンリーユーも有終の美を飾ることができた。最後の直線で前が詰まったときには駄目だ! と感じたし、ゴール前の勝負根性にはわが管理馬ながら大いに感動をもらった。アメリカからの長距離輸送は負担が大きく、香港到着後に一度は調子を崩した。それを見事に立て直した彼女自身と関わったスタッフたちには感謝と尊敬しかない。

 マルシュロレーヌを含めて今秋の海外遠征は大成功を収めることができた。ただそれはノーザンファームをはじめとした多くの外的サポートがあったから成し遂げられたことで、継続的に世界と戦い続けるためには厩舎システムの規制緩和が必要だと感じた。世界を股にかけるA・オブライエン厩舎のチームを見る度に思うことだ。

 大事を成すには常に進化を求め、発想の転換を図らなければならない。既成概念に捉われていてはさらなる高みは望めない。「今までこれでうまくやってきたから」という考えは世界では通用しないのだ。公正競馬を保つための規制のみ残して、競争原理を損なう規制を排除する。それが日本馬が海外の大レースを席巻するための必須条件である。

 今回をもってこのコラムを卒業させていただく。狭い世界だけに、良かれと思って書いた提言を散々批判され、多々つらい思いもしたが、ファンのみなさんに現場の生の声を伝えたい思いと、何よりも競馬社会のさらなる発展を願って書き続けてきた。ある意味、自分の勉強になったし、人間的成長にも寄与してくれた。今となっては書いてきてよかったと心から思うし、サンスポの関係者に深く感謝している。

 コラムが終了しても、調教師人生はまだまだ続く。これからもファンのみなさんを熱狂させるような強い馬を育てていきたい。そしてわれわれが愛する日本競馬の地位向上と発展を願ってやまない。

 ■矢作 芳人(やはぎ・よしと)1961(昭和36)年3月20日生まれ、60歳。東京都出身。父は大井競馬の矢作和人元調教師。開成高を卒業後、豪州での修業を経て84年に栗東トレセンへ。厩務員、調教助手を経て2005年に厩舎開業。21日現在、JRA通算730勝、重賞53勝(うちGI14勝)。ほかに海外GI6勝、交流GI3勝。

 ★21日のパンサラッサ…栗東坂路を4ハロン62秒1で力強く上がった。活気十分で、連勝の勢いを感じさせる雰囲気を見せている。池田厩務員は「前走後の反動を心配したけど、元気、動き、体の柔らかさ、全てがいいね。状態に関しては文句ないよ」と胸を張った。

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