中央競馬:ニュース中央競馬

2021.9.8 04:50

【田辺裕信 ゆる~い話】レース中に手応えなくなった馬を強く追うのは危険

田辺裕信騎手

田辺裕信騎手【拡大】

 手応えがなくなるといいますが、それはステッキを入れたり、手綱を動かして追ったり、あるいは舌鼓(ぜっこ)など、さまざまな扶助に対して全く反応がなくなってしまった状態です。そういう馬に対して、ステッキを強く、あるいはたくさん入れて追うなど、より強い扶助を与えるべきという人がいますけど、とても危険が伴います。

 手応えがないのは、ほぼ限界の状態です。そこでステッキなど強い扶助を与えることで、ヨレたり、つまずいたり、さらにはバランスを崩すこともあり、馬場が悪いときには本当に危険が高まります。

 あとは、メンタル面での影響があり、個人的にはこちらを心配します。人間でいえば、マラソンを限界で頑張っているときに、もっと速く走れとムチで叩かれるようなイメージです。こんなことをされれば、普通はマラソンなんて嫌いになってしまいます。

 馬がレースは苦しいものと思うことが一番のリスクですし、そうなるとレースで能力を発揮できなくなる可能性が高くなります。ただ、なかには手応えがなさそうなのに、扶助に反応する馬もいます。なので簡単に手応えがなくなったと判断はできません。

 簡単に言うなら、手応えがある馬は、糸で引っ張られるような感覚で勝手にゴールに向かって伸びていきます。しかし手応えがないと、そういう感覚はありません。完全に脚が上がった状態です。こちらがいくら頑張って扶助を与えても、反応はできないということなんですよね。 (JRA騎手)