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2021.9.1 04:53

【矢作芳人調教師 信は力なり】質の高い競馬提供のため、足元を見つめなおす時期

矢作芳人調教師

矢作芳人調教師【拡大】

 7月に行われたセレクトセール、セレクションセールに続きサマーセールも好況のまま開催を終えた。

 購買登録者増が示す通り、ここでも新規の馬主さんたちが存在感を見せた。以前も述べたが、新しいメンバーが競馬に投資してくださるのは本当にありがたいことだ。今まであまり競馬に詳しくなかった新規馬主さんが増えると、さまざまな質問を受ける機会も当然増加した。それは民間企業経営者として単純で当然な疑問なのだが、旧態依然たる厩舎社会の一員としては答えに詰まることが多い。

 例えば「火曜日はJRAの事務所が休みなので、その手続きは水曜日以降になります」と説明すると「どうして? 厩舎は調教やって仕事しているのに? シフト制にすれば済むことじゃないか」と。また「トレセンへの入厩検疫馬房やローカルの出張馬房は開業したての新規調教師を除いて平等に同数なんです」については「貴方は定期馬房数多いのになぜ? それじゃうちの馬が入りにくいじゃないか、平等という名の不公平だな。それに東西でシステムが違うのも意味がわからない」と。

 なぜ? なぜ? それは経営者として成功してきた人たちから見れば当然のリアクションなのだと思う。そういった一般社会との意識の乖離(かいり)についてしっかりした考え方を持っている調教師は数多くいるが、「変化を良しとしない厩舎社会の風潮により、みんな嫌われるのを恐れて声を上げられない」と説明すると「貴方も大変だね」と言われて話は終わった。全く納得はしていない様子だった。

 競馬サークルは地方競馬を含めて売り上げも増えて活況を呈している。そんな今だからこそ、質の高い競馬を提供してファンや馬主さんに喜んでいただくために、サークル全体として足元を見つめ直す時期が来ているのではないだろうか。

 ■矢作 芳人(やはぎ・よしと)1961(昭和36)年3月20日、東京生まれの60歳。父は大井競馬の矢作和人元調教師。開成高を卒業後、豪州での修業を経て84年に栗東トレセンへ。厩務員、調教助手を経て2005年に厩舎開業。8月31日現在、JRA通算715勝、重賞50勝(うちGI13勝)。ほかに海外GI3勝、交流GI3勝。