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2021.5.26 04:59

【横山武史へのエール(3)】師匠・鈴木伸尋調教師

横山武騎手(左)の成長を見守る鈴木伸調教師。プロ意識の高さは師匠も舌を巻くほどだ

横山武騎手(左)の成長を見守る鈴木伸調教師。プロ意識の高さは師匠も舌を巻くほどだ【拡大】

 連載の第3回は横山武史騎手(22)の師匠・鈴木伸尋調教師(61)が弟子との知られざる逸話を語った。

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 バテるはずの馬が直線で息を吹き返す。計時された調教タイムに鈴木伸調教師は目を丸くした。JRA競馬学校2年生の武史が美浦トレセンで厩舎実習を行っていたときのことだ。

 「まだ力も技術もないから掛かった馬に持っていかれちゃう。普通はバタバタになるけど、あの子は(ラスト1ハロン)12秒台で上がってきた。何でこんなに伸びるんだろうって。他の子とはちょっと違うなと思いました」

 弟子のキラリと光る素質の一端を目の当たりにした瞬間だった。

 デビュー年の13勝から成績は右肩上がりに上昇。昨年は史上最年少での関東リーディングに輝いた。「正直、こんなに(早く)成長するとは思わなかった。みんなには『返し馬で(作戦を)決める』って言っているようだけど、実は戦略も含めて自分でよく考えて勉強していると思います。武豊と似ているところはあるよね」。鈴木伸師は不世出のレジェンドの姿を重ね合わせている。

 普段の生活も全ては競馬のためにある。食事の席で武史は利き手と反対の左手で箸を使う。左右両方の手を使うことで、脳をフルに回転させるためだ。アルコールも一切口にしない。

 「目的意識が違うよね。リーディングになるとか、大きなGIを勝つとか、最終目標がそういうところにはないんだと思う。自分の納得する騎乗をして、納得のいく結果を出す。そこには限界がないから」。ストイックに騎手道を極めようとする22歳の背中を、師匠は温かく見守っている。

 エフフォーリアで挑む日本ダービー。無敗2冠制覇とともに、鞍上にとってはJRA最年少Vもかかる大一番だ。「あまりプレッシャーをかけないでほしいな。まだ本当に若いし、こういう場面を何回も経験しているわけじゃない」と気遣いつつ、信頼に満ちた言葉で締めくくった。

 「でも、逃さないだろうな、アイツは。そこにあるチャンスをちゃんと拾っていくと思うよ」

 偉業へのゲートが開く瞬間を師匠も心待ちにしている。(漆山貴禎)

 ■鈴木 伸尋(すずき・のぶひろ) 1959(昭和34)年10月26日生まれ、61歳。静岡県出身。97年に調教師免許を取得し、翌年に開業。25日現在、JRA通算374勝、重賞3勝。