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2020.8.4 05:00

【無敗3冠への道(1)】デアリングタクト調教主任「まだまだ成長する」

牝馬2冠のデアリングタクトは、秋に向けて福島県で英気を養っている(撮影・菅原和彦)

牝馬2冠のデアリングタクトは、秋に向けて福島県で英気を養っている(撮影・菅原和彦)【拡大】

 今春のクラシックは、皐月賞・日本ダービーをコントレイル、桜花賞・オークスをデアリングタクトが優勝し、史上初めて同一年で、無敗のクラシック2冠馬が2頭誕生した。その偉業から約2カ月が経過し、本紙ではきょうから秋に向けての新連載「無敗3冠への道」をスタート。両騎を交互に取り上げ、それぞれの知られざるエピソードや近況などを伝えていく。第1回はデアリングタクトの放牧先、福島県にあるノルマンディーファーム小野町を単独取材。現在の様子をリポートする。【毎週火曜日掲載】

 福島県のJR郡山駅から車を40分ほど走らせた静かな山中にあるテンコー・トレーニングセンター。その一角、ノルマンディーファーム小野町で、史上2頭目の無敗2冠牝馬デアリングタクトは、つかの間の夏休みを過ごしている。

 「馬体重はオークス優勝時(466キロ)から30キロくらい増えています。それでも(調教メニューを)詰め込むよりは、馬体を緩めた方が体質もしっかりして成長しますから。今年は気温がそれほど高くないので、夏バテもなく順調にきています」

 調教主任の池田浩之氏(36)が現状を説明する。馬体はふっくらしているが、トモ(後肢)の踏み込みの力強さはさすがだ。何より驚かされたのは落ち着きぶりで、見知らぬ記者が馬房に近づいても干し草をむしゃむしゃ。テンションが高い競馬場での雰囲気とは正反対だった。

 「このオンとオフの切り替えがすごい。ずっとピリピリしていると筋肉も硬直してきますし、成長が止まってしまう馬もいるんです。いい意味でだらけてくれるので、体も大きくなります」と池田主任は感心する。しっかりと調教を積んだ時には牝馬の平均を上回る一日7キロのカイバをペロリ。この旺盛な食欲も強靱(きょうじん)な心身を支えている。

 2歳時に2カ月ほど滞在した際は「目立って何かが抜けている印象はなかった」という。ただ、のちの活躍を予感させるエピソードがあった。

 「ここの坂路は(砂厚が)結構深いんですけど、脚を取られることがありませんでした。馬が自分の重心をどうするのか、考えながら走っているんでしょうね」

 重馬場の桜花賞、良馬場のオークスと全く違う条件下で強烈な末脚を発揮できたのは、卓越したバランス感覚を潜在的に持っていたからこそだったのだ。

 現在は、ダートコースと坂路を併用して徐々に調整のピッチを上げている。「以前より筋肉のメリハリが出てたくましくなりました。調教でもしっかりとハミに力が乗って、騎乗者を引っ張っていくような感じ。今はフォームを固めて次に進めていく段階です」と池田主任。今月上旬にも京都府の宇治田原優駿ステーブルへ移動する予定だ。

 秋華賞(10月18日、京都、GI、芝2000メートル)では、史上初となる無敗での牝馬3冠が懸かる。「本当にすごい馬です。史上初になるかもしれない馬に関わらせてもらっているのはうれしい。秋、来年とまだまだ成長すると思います」と池田主任は目を輝かせる。歴史的な偉業も、希代の名牝にとっては通過点になるかもしれない。(漆山貴禎)

★北海道では夜間放牧も…福島に移動する前のデアリングタクトは、北海道新ひだか町のノルマンディーファームで春の疲れを癒やした。一旦、馬を原点に戻す意味で、夜間の放牧も行ったという。同ファームの岡田牧雄代表は「さらなる成長を促す意味でも、しっかりとした休養が必要。夜間放牧をすれば悪いところが全部出てくるし、ステップアップするためには必要なこと」とメリットを説明した。夜間放牧によって左前脚に軽い不安が見つかったが「治療を優先させて、不安がなくなってから移動した」と同代表は話している。

★ノルマンディーF小野町…福島県小野町にあるテンコー・トレーニングセンターの施設を借り受ける形で、2013年に開業した育成牧場。1厩舎12馬房でスタートし、現在は6厩舎70馬房。自前の設備としてはウオーキングマシン3台、トレッドミル2台を備える。代表は岡田牧雄氏。

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