横山英二【拡大】
美浦トレーニングセンターの南馬場でもうすぐ大規模な工事が始まる(現在はDコースが閉鎖)。老朽化したスタンドの建て替えに加え、B(ウッドチップ)コースとD(ダート)コースの入れ替え作業である。とりわけ、われわれが驚いたのがコースの入れ替え。今も昔も主流は内側から数えて2番目のウッドチップコースだが、これが芝、ポリトラックコースを飛び越え、1番広くて大きいDコースと入れ替わるのだから、各厩舎の調整法そのものが大きく変わってこよう。他のコースは左回りの東京開催中なら左回り、右回りの中山開催中なら右回りというように、開催に応じて回りが変わる。しかしながらウッドチップコースは直線に坂がある関係上、一年中、右回りだけで追い切りが行われている。初めての左回りの東京を苦にした、なんてパターンはたぶん少なくなり、事前に追い切りの走りで得意不得意を見抜くことも可能だ。ご存じの通り、追い日といわれる水曜日のウッドチップコースは各厩舎が入り交じり、戦国時代の合戦場のごとくひどいありさまで、事故がいつ起こってもおかしくはないが、広いコースになれば安全性はグンと増す。また、スタンドから近くなることで、肉眼では分かりにくかったフォームの善しあしや手応えも確認しやすくなり、時計班のトラックマンとしても大助かり。追い切りラッシュが少しでも緩和してくれることを切に願いたい。
それはそうと、最近、時計を聞きにくる調教助手さんたちが口をそろえていう。「チップが滑る」というフレーズ。ウッドチップコースは砂のダートコースと違い、木片などで形成されているため、中に空気が入りやすく、反発性は弱いが、冬場はとくに乾燥が激しく、滑るのだそう。朝一番は氷点下になることも珍しくはなく、不凍液の影響も少なからずあるだろう。本来は調教駆けするタイプでも、直線でバランスを崩しているシーンが目立つ。そんなタフで滑りやすく時計が出にくいウッドチップコースで調教採点「7」(競馬エイトに掲載)がついている馬は要注意。かなりデキがいい証拠ですから。