中央競馬:ニュース中央競馬

2019.2.13 13:16

【藤代三郎・馬券の休息(73)】東京競馬場のこと・その1~府中の水はおいしいか?(1/2ページ)

週刊Gallop誌上で好評連載中の作家・藤代三郎氏が、競馬にまつわる日常を氏のユニークな視点で綴る「馬券の休息」

週刊Gallop誌上で好評連載中の作家・藤代三郎氏が、競馬にまつわる日常を氏のユニークな視点で綴る「馬券の休息」【拡大】

 黒尾透『五冠馬シンザンのその背中』(芸文社2001年刊)という本がある。「競馬フォーラム」に連載した「東京競馬物語」をまとめたもので、「五冠馬シンザン」という書名ではあるものの、シンザンに関する記述は極端に少ない。馬をめぐる84の物語、と副題にある通り、競馬周辺のさまざまな話題をとりあげている。ちなみに著者は毎日新聞の記者。

 第1章の「競馬場にまつわるエピソード」が面白い。全15話のこの章は、最初の2話を除いてあとはすべて東京競馬場に関する話で埋められているのだ。

 たとえば、4コーナーの曲がり角にある井田家の墓は全部で15基。井田是政は、豊臣秀吉に攻められた小田原城から落ちのびてこの地に住み、開墾した土地と西武線の駅名にその名をとどめているというが、それは語り伝えであり、井田是政が小田原城から落ちのびたことを示す資料はないという。えっ、ないのかよ。

 是政の名が出たので書いておくが、JR中央線の武蔵境から是政まで伸びる西武多摩川線は、是政の一つ手前の競艇場前(当時の駅名は常久)から年間12万トンの砂利を運ぶために大正時代につくられた。現在の多摩川競艇場は、陸掘りされた穴に水が溜まったものを整備して戦後にオープンしたものだ、ということは内田宗治『東京の秘密33 多摩・武蔵野編』で知った。

 『五冠馬シンザンのその背中』の第1章のことに話を戻せば、その他にも、シルバーシートがはじめて設置されたのは東京競馬場であるとか、府中に関する豆知識がてんこもりで楽しい。しかししかし、この第1章のなかでいちばん興味深いのは、第10話「日本一」という項だ。水、の話である。東京競馬場には8本の井戸があるというのだ。JRAの全国の競馬場で、井戸水を飲料水にも使っているのは東京競馬場だけ、というのである。

【続きを読む】