ウマ~くつけたい!馬主が思い込めて愛馬の名前申請

2015.10.6 05:05

 新馬戦は秋に入って真っ盛りだが、そもそもデビューするには馬名審査にパスしなければならない。カタカナで2文字以上、9文字以内が大前提。馬名登録機関に年間5000~6000頭分の申請が出される中、OKとなる名前、NGの名前とは!? 栄光のGI馬や実況中継に支障が出る「スタート」などの名称は付けることができない。登録までの流れとともに審査の基準を探った。 (企画構成・片岡良典)

 ディープインパクト(英語で「深い印象」)、オルフェーヴル(フランス語で「金細工師」)、ブエナビスタ(スペイン語で「素晴らしい景色、絶景」)…。

 親がわが子の命名に知恵を絞るように、馬主は愛馬の名前をあれこれと考える。しかし、付けたい名前なら何でもOKというわけではない。競走馬としてデビューさせるための第一歩は、馬名登録をジャパン・スタッドブック・インターナショナル(JAIRS)に申請して、審査をクリアすること。JAIRS登録部の調査役、柳田裕史氏が語る。

 「クラブ法人からの馬名登録が多くなるのが2歳の2月~4月。この時期は1年の中でも忙しくなります。受け付けてからは会社名や商品名のほか、営利目的の宣伝になっていないか、人に対して不快感を与えていないかなどを徹底的に調査します」

 中央競馬に関しては2002年までJRAが登録業務を行っていたが、現在はJAIRSが一括して担当。馬名審査に必要な血統登録証明書とともに申請された馬名について、登録部が馬名の意味や由来、同名馬の有無などを調査する。1年に受け付ける馬名申請は約5000~6000頭に及ぶという。

 「最近は日本語だけではなく、英語やフランス語、イタリア語など外国語の名前も増えました。アルファベット表記の裏付けや、その他の外国語の調査で時間を要することもあります」と柳田氏。

 馬名審査をクリアすれば馬名登録通知書が発行され、JRAや地方競馬全国協会(NAR)の施設へ入厩。初陣を目指すことになる。競走馬登録後の馬名変更は、未出走の場合に限って1度だけ可能だ。

 「国名のみ(ニッポン、アメリカ、イギリス、スペイン)や首都名のみ(トウキョウ、ワシントン、ロンドン、パリ)、実況放送などに支障が生じる用語(スタート、セントウ、ゴールなど)は付けられない場合が多いですね。(マイネルなど)冠名は(共同所有を含め)3頭目から使用可能です」

 首都名などを使いたい場合は、1996年のGIICBC賞勝ち馬エイシンワシントン、14年の豪GIオールエイジドSを制したハナズゴールのように冠名を付けたり、92年のGII高松宮杯優勝馬ミスタースペインのように別の単語を足したりするなど、工夫する必要がある。

 馬主が愛馬にどんな思いを込めて名付けたのかを考えるのも、競馬の楽しみの一つだ。

★文字数

 国内で馬名はカタカナで2文字以上9文字以内、アルファベット圏ではスペースも1文字として18文字以内と規定されている。最大9文字になった理由としては、ローマ字表記では例えば「さ」=「SA」と2文字になるため、アルファベット18文字の半分にしたという説がある。ただ、外国馬(カナ表記にすると10文字以上になることもあり、最多で13文字の馬が3頭出走。そのうち、米国馬フリートストリートダンサー(Fleetstreet Dancer)は2003年ジャパンCダートを勝った。

■国際保護馬名

 登録基準は2005年以降の主要な国際競走11レース(凱旋門賞、ドバイワールドC、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、メルボルンC、ジャパンCなど)の勝ち馬。日本馬ではシンボリルドルフやトウカイテイオー、ヴィクトワールピサ、ディープインパクトもすでに保護されている。

■珍名あれこれ

 ★名物馬主 珍名の宝庫といえば小田切有一氏の所有馬。引退馬では2006年のGI高松宮記念覇者オレハマッテルゼ、10年のGIII七夕賞勝ち馬ドモナラズの他、ロバノパンヤ、カミサンコワイ、モチ、タコなどがいる。現役では、オープン特別勝ち馬モグモグパクパク(美・高橋祥、牡5)や、コリャコリャ(栗・田中章、牝4)、ゴマスリオトコ(栗・音無、牡3)など。

 ★新馬 デビューを控えた2歳馬では、静岡の方言で「すごくいい所に行く」という意味のイイトコマンジュウ(美・小桧山、牝)や、カジッタリンゴ(栗・松元、牝)、オニニカナボー(美・天間、牡)など。

■商品名と同じだった主な馬名

 ヒヤキオーガン(牡、父クモハタ、1954年阪神大賞典、56年日本経済新聞杯、中京記念) 馬主は当時の樋屋製薬社長・坂上忠兵衛氏で、同社の小児薬「樋屋奇応丸」から命名

 エイトクラウン(牝、父、ヒンドスタン、64年阪神3歳S、66年鳴尾記念、宝塚記念) 馬主は当時、愛知トヨタ自動車の社長だった山口昇氏。最初は同社の高級乗用車「クラウンエイト」で馬名申請したが、却下されたという。同馬の子ナオキは73年の宝塚記念馬で史上初の宝塚母子制覇を達成。エイトクラウンの半姉はトヨタクラウンで1勝。

 タチカワボールペン(牝、父フエルオール、1勝) 立川ピン製作所の初代社長・立川俊武氏が「ボールペンのように芯が通った馬に」という願いを込めて命名。64年10月4日の京都競馬で初勝利を挙げた。

■間違って登録された馬名

 ラフオンテース(牝、父フイルモン、79年デイリー杯3歳S、阪神3歳S、81年北九州記念、小倉記念、朝日チャレンジC)=馬主は小柴タマヲ氏で、本来はラフォンテー“ヌ”(フランスの詩人)で登録するはずだったが、何かの手違いでヌをスで登録された。

 スウヰイスー(牝、父セフト、52年桜花賞、オークス、52&53年安田賞)=馬主は女優の高峰美枝子氏。本来は“スウヰトスー”で登録する予定だったが、申請時に電話で聞き間違えたために、スウヰイスーで登録されたといわれている。

■横綱と同名?

 ハクホオショウ(牡・父ヒンドスタン、1972年カブトヤマ記念、73年安田記念、札幌記念、73年サンケイ賞オールカマー)は、56年ハクチカラ、61年ハクショウでダービーを2勝した西博氏の所有馬で、冠名に“ハク”を多く使用していた。ハクホオショウは「冠名+報奨、褒賞、褒章」が名前の由来だと推測できるが、現役横綱・白鵬翔(はくほう しょう)とほぼ同じ発音になる。

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