競走馬の『食』を検証!1頭ごとに“シェフ”が調合

2015.9.23 05:06

 天高く馬肥ゆる秋。空が澄みわたり、馬も食欲が増すような快適な季節であることを示す言葉だが、サラブレッドは実際にどんな物を食べているのか。競馬界の話題に迫る『ズームアップ』は今回、カイバ(飼い葉)に焦点を当てた。競馬ファンは厩舎関係者の「カイバ食いがいい」という談話などを目にすることが多いはず。美浦トレセンの加藤征弘厩舎の協力を得て、競走馬の『食』を検証する。 (企画構成・森田実)

 実りの秋、食欲の秋。食べ物のおいしい季節がやってきた。サラブレッドの食事はカイバだ。同じ種類のレストランでもお店ごとにレシピがあるように、厩舎や担当者によって多様なカイバが存在。加藤征弘調教師(50)が説明する。

 「カイバはエネルギー源だからね。馬の個体、運動量に合わせて調節していくのが大切。うちの厩舎ではフィードマン(飼料調合者)が一括してまかなっている」

 加藤征厩舎では2人のフィードマン、長尾瑞樹厩務員(40)と石井聖司厩務員(43)が、在厩している22頭分のカイバを調合している。まさにサラブレッドにとっての“シェフ”だ。

 「馬にとって楽しみは食事ぐらいですからね。馬は話すことができないから、こちらがいろいろ感じ取ってあげないと」と長尾厩務員。「うちはオーソドックスですよ」とカイバの中身を見せてくれた。

 乾草(干した牧草)、配合飼料(トウモロコシ、ヒマワリの種などをミックスしたもの)、燕麦(えんばく)、サプリメント(関節の炎症を抑制)、塩などがカイバの基本になる。それを食の細い馬、馬体を増やしたい馬、絞りたい馬など、それぞれの状態や運動量に合わせて調整。好みに合わせて、ニンジンやリンゴなどを加えることもある。

 「レースに向けて調教が強くなると、精神的に追い詰められてくるので胃腸の反応が鈍くなります。なので配合飼料を濃いものでなく、アッサリとしたものに変えたりしますよ」と長尾厩務員。サラブレッドのシェフは栄養士でもあるのだ。

 加藤厩舎では馬名を書いたバケツを並べ、カイバを1頭ごとにブレンドしていく。1日のカイバ量は8升(14・4リットル)で、朝と夕方に分けて食べさせる。

 また、レース当日は発走の4~6時間前に、戦うために特に必要なエネルギー源である“濃厚飼料”燕麦を1升(1・8リットル)分、“勝負カイバ”として与える。そして「レースの後は疲労しているので、消化のよいものを与えます」(長尾厩務員)とアフターケアも抜かりはない。

 毎週末、競馬場では激しいレースが行われている。サラブレッドがターフでレベルの高いパフォーマンスを披露できるのは、担当者の愛情が込もったカイバを食べているからこそだ。

★水にもこだわる

 加藤征厩舎では水道に浄水器を2台も取り付けている。「水質が悪いと食欲に大きく影響するので」と加藤征調教師。水素水の供給装置も設置しており、「代謝がよくなる」と効果を実感。1頭1頭の健康管理に気を配っている。

★食費は?

 厩舎や担当者が与える飼料の種類、サプリメントなどによって違ってくる。JRA所属馬の場合、一般的に1カ月で1頭にかかわる食費は7~10万円弱といわれる。

★ニンジンはデザート

 馬とニンジンはイラストやマンガで一緒に描かれるケースが多く、馬の鼻先にニンジンをぶら下げたシーンもよく出てくる。実際に馬はニンジンが好きなのか? JRA競走馬総合研究所・企画調整室の間(あいだ)弘子氏は「ニンジンを知らない馬は与えても食べませんが、馬は甘い物が好きなので、(与えて)慣れれば食べます」と説明する。ニンジンには甘みがあり、それを好む馬も多いが、あくまでも主食にはならず、カイバの中でもデザートやおやつ扱いだ。

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