第二の馬生、支援します!馬を救い人を癒やす『TCCセラピーパーク』

2019.6.26 05:04更新

TCCセラピーパークの『ホースシェルター』で過ごすハリケーンバローズ。同施設の代表取締役・山本高之氏(右)を川端記者が取材した(撮影・安部光翁)

 馬を救い人を癒やす福祉活動を行う施設『TCCセラピーパーク』が5月に滋賀県栗東市にオープンした。行き場のない引退競走馬の一時預かり場所として、日本で初めて常設されたホースシェルターには4頭が入厩。第二の馬生に向けて転職活動にいそしんでいるが、まだまだ多くの支援が必要だ。

 栗東トレセンから車で約10分。新緑に囲まれたTCCセラピーパークでは現在、4頭のサラブレッドが暮らしている。いずれも引退後の行き先が決まらなかった元競走馬だ。

 4頭は日本で初めて常設された引退競走馬の一時避難施設『ホースシェルター』で暮らし、リトレーニングを行いながらセカンドキャリアの受け入れ先を探している。その中の1頭、サトノサイベリーは右トモを骨折し勝ち星を挙げることなく現役を終えた。地方に移籍するにも復帰まで時間がかかる状態…。多くの場合が行き先知らずになるケースだが、再始動するまでの猶予期間を得られた。施設長で『TCC Japan』の山本高之代表取締役は、元気を取り戻してきた3歳牝馬に優しいまなざしを向ける。

 「少しずつ運動を開始していて、痛がる素振りは見せていませんね。ご縁があった4頭を預かっていますが、受け入れられる頭数は限られています。でも、気持ちばかり先行してはいけないんです。まずは今の自分たちにできることをしっかりやっていきます」

 月会費2000円のシェルターサポーターを募って運営するシステムで現在、約110口の支援がある。サポーターはシェルターエリアで触れ合えたり、動画配信で日々の様子を確認したり、限定イベントなどに参加できる。画期的な取り組みながら課題は多い。施設滞在中の飼料代などの費用は1頭あたり月約10万円で、計40万円が必要。療養中はさらに治療代がかさむケースもあり、「現状では赤字です」と同代表。まだまだ支援が足りていない。

 シェルターを見学していると、ひと際馬っぷりのいい鹿毛馬がいた。ダートで4勝を挙げ、重賞級と評価されたハリケーンバローズだ。馬券でお世話になったのでお礼を伝えた。そして、その他の2頭(アスールアラテラ、キラーサイクミレー)とともにセカンドキャリアでの活躍を願わずにはいられない。

 山本代表は「全国には余っている馬房がたくさんあって、受け入れたいという話もいただいています。ビジネスとして形になって支援の輪が広がれば、1頭でも多くの馬を救うことができます」と力を込めた。

 ターフで活躍できなくなっても、乗馬やセラピーホースなど生きる道はある。働き方改革が必要なのは人間だけではない。 (川端亮平)

 ◆現役時代にハリケーンバローズを管理した角居勝彦調教師 「引退が決まった競走馬で行き先が決まっている馬はほとんどいません。ただ、競馬サークルにいられる猶予期間はほとんどなく、このような施設が栗東トレセンの近くにできたことはうれしいし、ありがたいことですね。医療、福祉、馬事など、馬が活躍できる分野はたくさんあります。ハリケーンバローズには、彼のメンタルや体力に適したどこかの枠に入ってもらえればうれしいですね」

★一口オーナーも

 シェルター会員になるには、まず月会費1000円の引退馬ファンクラブ『TCC FANS』に入会する必要がある。引退馬のキャリア支援を行う同クラブでは、月会費4000円でTCCホースの一口オーナーになることもできる。

 問い合わせは、(株)日本サラブレッドコミュニティクラブ(TCC Japan)電話077・584・5945。また詳細はホームページ(https://www.tcc-japan.com/fans/)で。

★ホースセラピー施設も併設

 馬を救い人を癒やす施設として、児童発達支援・放課後等デイサービス『PONY KIDS』も行われている。障害を抱えた子供を対象にしたホースセラピーで、ウッドチップが敷かれた縦36メートル横18メートルの角馬場でのポニー乗馬やその世話をするなどして触れ合っている。京都競馬場で活躍していたキングボーイなどポニー5頭に加え、2013年の小倉記念など重賞2勝を挙げたメイショウナルト、ラッキーハンターの元競走馬2頭もセラピーホースとして活躍している。

 また、今後は地域のイベントに参加したり、栗東市内の幼稚園児をセラピーパークに招待するイベントを企画中。山本代表は「『馬が活躍するまちづくり』も活動のひとつ。『馬のまち栗東』でも馬と触れ合う機会はあまりないですからね。まだまだできることはたくさんあります」と、人と馬との共生社会の実現に向けて汗を流している。