【矢作芳人調教師 信は力なり】リスグラシュー海外遠征でたくましく

2019.6.26 05:02更新

宝塚記念を制したリスグラシューの口取りにおさまる矢作調教師(左端)

 管理馬リスグラシューで宝塚記念を勝たせていただいた。ファン投票してくれた方、応援してくれた方々に厚く御礼を申し上げたい。欧州血脈で固めた母系にハーツクライの配合で、例年上がり時計を要する宝塚記念は適した条件のレースだと考えていたが、牡馬たちを3馬身ちぎったパフォーマンスは自分の想像を超えていた。

 一般に海外遠征帰りは調整が難しい。微妙に疲れが残るケースが多いし、脚元に不安が出る場合もある。今まで何度も経験してきたことである。ところが、今回のリスグラシューには全くそんな不安がなかった。昨年暮れと今年春の2回の香港遠征が彼女をたくましくさせたようだ。リスグラシューは2歳時から一貫して坂路中心に仕上げてきた。

 だが香港ではコースでの調整を余儀なくされるし、環境が異なる検疫厩舎にも入らなければならない。もちろんその間には航空機輸送もある。その経験があるから、いつもの厩舎で過ごし、いつもの坂路で調教された今回は馬がイージーに感じていたように思う。自然に馬の状態は上がっていったのだ。それにしても2~3歳時は東京に輸送するだけでも大きく馬体を減らして細くなっていた彼女が…その成長ぶりは驚異的でもある。

 秋のローテーションはこれから馬の状態を見ながらオーナーサイドと協議していくことになる。国内だけでも天皇賞、エリザベス女王杯、ジャパンC、有馬記念と選択肢は多いし、米国のブリーダーズCターフと豪州のコックスプレートからはさまざまな優遇措置込みの招待をいただいた。現役生活もそう長くはないだけに、リスグラシューにとってベストの選択をしてあげたいと思っている。

矢作 芳人(やはぎ・よしと)

 1961(昭和36)年3月20日、東京生まれの58歳。父は大井競馬の矢作和人元調教師。東大合格者を多数輩出する開成高を卒業後、豪州で修業し、84年に栗東トレセンへ。厩務員、調教助手を経て2005年に調教師として厩舎開業。14、16年にJRA賞(最多勝利調教師)獲得。25日現在、JRA通算594勝。重賞は33勝で、うちGIは12年の日本ダービー(ディープブリランテ)、今年の宝塚記念(リスグラシュー)など7勝。海外GI勝ちは16年ドバイターフ(リアルスティール)。趣味は競輪、サッカー観戦など。