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【ズームアップ】馬術の聖地・馬事公苑リニューアル 東京五輪へ広がる夢

2017.2.7 05:05更新

生まれ変わる馬事公苑の完成予想図。東京五輪を見据えて、世田谷の広大な敷地に新たな馬の聖地が誕生する (JRA提供)

 競馬界の話題を取り上げる「ズームアップ」は馬事公苑の後編。前編では騎手にかかわる話題に触れたが、今回は2020年の東京五輪を見据えてリニューアルされる同苑の“未来”を紹介する。現在は改修工事がスタートしたばかり。どのように生まれ変わるのか、そのビジョンに迫った。 【取材構成・片岡良典】

 一般者の来苑は昨年末で終了し、2019年に予定しているプレ五輪(日程は未定)に向けて、馬事公苑は第1期工事が始まった。同苑の職員と、マイネルレコルト(2004年GI朝日杯FS優勝)など所属馬の大半は、競走馬総合研究所の旧所在地(栃木県宇都宮市)に移動済み。東京五輪を見据えて、本格的なリニューアル作業に入っている。

 メイン会場の馬場だけでなく、厩舎改修(広さは現在の1・5倍、馬房も300→400へと増設)、インドア施設や樹木の整備など276億円(建築費、土木工事費、設備工事費)と、設計費18億円の経費が計上されている一大事業だ。

 「工事費用はかかりますが、国や五輪組織委員会に協力するのは悪い話ではありません。造ったら残すのが基本的な考えで、馬術の振興、人材の育成なども含め、馬術と競馬はひとつのライン上にあると考えています」とJRA馬事部の西尾高弘審議役は説明する。

 メインアリーナは国際基準を満たしたものを新設。使用する砂は、国際基準に合致した欧州産のサンドダート(砂とフリースや合成繊維を混合した素材)を導入する。滑らずしっかりとグリップが利いて体勢を崩すことなくジャンプできるトップクラスの材質で、騎乗者が競技に集中できるという優れものだ。五輪・パラリンピックでは、メイン会場の四方を囲むように約1万4000席の仮設スタンドが設置される予定。これから組織委員会との話し合いで具体的な形が決まっていく。

 欧州各国に比べて、日本は馬に接する機会が少ない。だが、3年後の東京五輪は、馬術を通じて競馬を含む“馬文化”を発信する好機でもある。五輪で動物と人間が一体となって取り組む種目は馬術と近代五種(射撃、フェンシング、水泳、馬術、ランニング)の2競技しかない。

 「選手強化に取り組む準備を整えて“チームJAPAN”として大会に送り込める環境を作っていきたい」と西尾審議役。JRAも協力を惜しまない姿勢だ。馬事公苑で乗馬の基礎を学んだ岡部幸雄元騎手も「日本の馬術選手の技術もかなり向上している。場所を貸すだけで終わることなく、ぜひメダルを取ってほしい」と日本選手にエールを送る。

 完全なリニューアルオープンは五輪後の第2期工事を終えた22年秋だが、今は東京五輪のひのき舞台としての準備中。生まれ変わった馬術の聖地で、世界トップクラスの人馬がメダルと母国の威信をかけて競い合う姿が今から楽しみだ。

★前回の東京五輪は

 1964年の東京五輪における馬術は、総合が軽井沢、馬場が馬事公苑、障害が国立競技場で行われた。主な出場選手は、井上喜久子氏、岡部長衡氏、松平頼典氏、法華津寛氏ら。馬場団体(岡部、松平、井上)は6位に入賞している。

★五輪の馬術

 五輪の馬術は馬場、障害、総合(馬場+障害+クロスカントリー)の各種目(個人・団体)があり、馬場と障害が馬事公苑で行われる(総合は海の森クロスカントリーコース)。選手に年齢制限はなく、2012年ロンドン五輪では法華津(ほけつ)寛選手が71歳で出場して話題になった。パラリンピックの馬術は、馬事公苑で個人規定、個人自由演技を実施。それぞれ障害の種類や程度に応じてクラス分けされて行われる。ほかに団体総合も。

 馬術の五輪出場には、国際大会で結果を出す必要がある。「日本は開催国ですが、出場枠が4人から3人に減ったので、(出場するには)厳しい戦いになります」と西尾審議役。五輪のJRA職員といえば柔道での活躍が顕著だが、「馬術でも職員を出場させたい」としている。馬事公苑所属の戸本一真(明大卒)、佐渡一毅(京産大卒)両職員は欧州を転戦中。馬術で日本がメダルを獲得すれば、1932年ロサンゼルス大会の障害飛越で金メダルを獲得した“バロン西”こと、西竹一氏以来の快挙だ。

★元JRA騎手も挑戦

 昨年のリオ・パラリンピック大会で馬場馬術に出場した宮路満英さんは元JRA調教助手。リオでは障害の程度によって5つにクラス分けされていたが、宮路さんは脳卒中が原因で右半身まひと高次脳機能障害があり、2番目に重いクラスだった。宮路さんのほかにも元JRA騎手の常石勝義さん、石山繁さん、高嶋活士さんが東京五輪を目指している。「大変な思いをしながらもチャレンジしたいと希望を持っている方々を、JRAとしてもバックアップしたいですね」と西尾審議役。

馬事公苑

 (ばじこうえん)人馬の育成や馬術訓練、馬術競技会の開催、競馬の騎手養成を行う施設として、1940年9月29日に開苑。JRA(日本中央競馬会)が管轄する施設で、面積(18ヘクタール)は東京ドーム約4個分。64年東京五輪後は馬術競技大会や、馬事振興、普及の拠点となっている。住所は東京都世田谷区上用賀2-1-1。

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