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【ズームアップ】新潟“千直”外枠有利は傾斜にあり

2016.8.9 05:04更新

スタート地点から見た千直コース。わずかだが内ラチ沿いが低く、外寄りが高いという高低差がある (撮影・菅原和彦)

 夏の新潟開催も2週目が終了。猛暑の中、熱い戦いが続く。新潟といえば一直線にコースを突っ走る芝1000メートル戦が名物。日本で唯一の直線競馬は“外枠有利”が定説だ。今回の「ズームアップ」は、その傾向をデータと関係者へのインタビューで徹底検証。記者自ら馬場も走り、改めて千直の攻略法を追求した。 (企画構成・芳賀英敏)

 日本で唯一の直線競馬として定着した、新潟の直線・芝1000メートル戦。“千直”の通称で知られる独特のコースは、外枠有利が定説となった。こうした結果を生み出す背景を改めて検証したい。

 数字の裏付けはある。では、実際に関係者はどう感じているのか。興味深いのは中舘英二調教師の見解だ。

 「コーナーは、わずかですが外側が高く傾斜がついています。内ラチ沿いは、内回り、外回りの合流点になるので、アンジュレーション(起伏)がないぶん、外ラチ沿いの方が走りやすいという心理もあります」

 騎手としてJRA1823勝、うち千直で25勝をマークした名手は、うねりのある内を避けて外に行きたい騎手心理の影響を指摘した。

 現役では内田博幸騎手の指摘も傾聴に値する。

 「馬場は真ん中から外の方が、内よりも高くなっているから走りやすいイメージがある。ラチが見えた方がいいし、周囲に馬がいた方が走る。だから自然と外に集まるんじゃないかな」

 中舘師同様、傾斜に着目した上で、馬の習性に言及したが、“高くなっているから走りやすい”とはどういうことか。

 その疑問を解決してくれたのは、今年の千直で3戦全勝、通算でも千直7戦5勝の戦歴を誇るミルコ・デムーロ騎手だ。

 「馬が安心するよ。高い位置の方が見通しがいいぶん、走りが安定するね。走りやすいから、馬もそっちへ行く」

 草食動物である馬は、本能的に身の安全を保つために見通しを大事にするという。高い=走りやすい。伸び伸びと走れて能力を発揮できる、という見立てだ。また、「内枠からだと“坂”だよ」とも。労せずに、安心して走れる外への進路をとれる外枠が有利なのは当然、というわけだ。

 3者の意見をまとめると、千直の外枠有利は、芝コースの構造上の特性に、騎手心理とサラブレッドの本能が絡んだ結果といえるだろう。やはり、外枠有利の傾向には裏付けがあった。この後も新潟開催は、千直が毎日1レース行われる。独特のコースを、しっかり攻略していこう!

★芝の抵抗も想像以上…6分36秒

 「芳賀ちゃん、千直走ってみて。くれぐれも、倒れてJRAさんにご迷惑をかけないでね」。デスクの指令を受けて、ひそかに走り込みと食事制限をして臨んだ。

 目標タイムは、6分以内。クリアする自信はあった。調教(夜中のアスファルト上)では1キロを4分台半ば。芝との違いはあっても、これなら楽勝だろうと踏んでいた。

 ところが…。猛暑に体力を奪われ、足首の上まで埋まる芝の抵抗も想像以上。結果は6分36秒の“タイムオーバー”だった。未勝利馬でさえ1分を切るサラブレッドは、やはりすごいと実感。そして、大きなスタンドから受ける圧力と、馬場の高低差も体感できた。

 芝コースの構造JRA全10場の芝コースは、降雨の際に水を流す(水はけをよくする)目的で、斜度2%程度、馬場中央部分のやや外側が最も高い構造になっている。幅員25メートルの新潟では内ラチから15メートル地点が最も高い。また、コーナー部分も内ラチ沿いが低くて外側に向けて高くなる形状だ。

★JRAの見解は

 新潟競馬場・施設整備課の鹿内英登課長は千直の傾向について「馬場担当者としては、均一な馬場になるよう芝刈りや肥料なども内外で作業を変えずに管理しています。なぜそういう結果(外枠有利)になるのか、明確な理由を見いだすことはできません」と語る。馬場の硬度も測定しており、枠順による有利不利が出ないように調整するのが務めだ。「最終日まで良好なコンディションを保てるよう、天候を見ながら管理しています」と鹿内課長。馬場管理の大敵である雨との戦いに神経を使いながら、良質な芝の管理に専念する。

★逆説も…

 本文に登場したホースマンは、安易に千直の外枠有利を認めているわけではない。「外はスタンドがあってロケーションが変わるので、内ラチ沿いの方が走りやすい面もあります。だから正解はありません。千直は騎手の腕が出るコースです」と中舘調教師は騎手の技量を重視。内田騎手も「物見をする馬にとっては、集中して走れなくなるのでスタンドに近い外枠、外の進路が不利になることもある」と証言する。馬の気性によっては、外枠が不利になることもあるだけに、関係者の談話には注意を払いたい。

★欧州には“二千直”も

 日本では新潟千直が唯一の直線コースだが、世界は広い。英国のニューマーケット、フランスのメゾンラフィットには、2000メートルの直線コースがある。また、タイキシャトル(仏GIジャックルマロワ賞)、シーキングザパール(同モーリスドゲスト賞)、アグネスワールド(英GIジュライC、仏GIアベイユドロンシャン賞)と日本調教馬が勝った4つのGIも直線コースだ。欧州のスプリントGIは、全て直線競馬。Mデムーロ騎手は欧州の直線コースについて「内外がフラット。だから、右にも左にも、ラチ沿いに馬群ができるね」と説明。高低差がある新潟との違いを指摘した。

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