【矢作芳人調教師 信は力なり】血統の歴史こそ競馬の醍醐味

2020.9.16 04:55

 先週の開催から多くのWINSで馬券発売が再開された。まだまださまざまな制限が課されているが、多くの方が訪れたようで、SNSなどからも紙の馬券を手にしたファンの皆さんの喜びが感じられた。われわれ関係者は競馬開催を継続して遂行することが何よりの命題であり、入場制限緩和についてはJRAの慎重な経営判断にお任せするしかないが、プロ野球やJリーグでも制限緩和が決定した。いつの日か競馬場にファンの歓声が戻ってくるときを願ってやまない。

 秋競馬が始まったこの時期に日本にいるのは15年ぶりである。毎年ケンタッキーのキーンランドセプテンバーセールに出張していたからだ。モズアスコットやコントレイルの母ロードクロサイトを購入したセリであり、キーンランド1カ所で数多くのさまざまな血統の1歳馬を見ることができるので、調教師としての勉強の意味もあって毎年必ず訪れていた。今年は残念ながらセリ名簿とビデオチェックによる参加となってしまったが、入念な血統分析と繰り返しのビデオによる観察の甲斐あって無事にオーナーに良い馬を購入していただけてホッとしている。ただ、やはり馬は実際に見て決めるものであり、一抹のむなしさは残る。来年は再びケンタッキーを訪れたいものだ。

 こちらはケンタッキーでなくニューマーケットのタタソールズオクトーバーセールだが、先週土曜日の新馬戦を勝ったポールネイロンの母イングランドローズもまた海外セリでオーナーに購入いただいた良血馬である。ロードクロサイト同様この馬もわが厩舎で管理し、未勝利で終わったが、高い素質を持つ子供を産んだ。血の歴史はこうやって紡がれていく。これぞ競馬の醍醐味(だいごみ)だと感じる今日この頃である。

 

■矢作 芳人(やはぎ・よしと)1961(昭和36)年3月20日、東京生まれの59歳。父は大井競馬の矢作和人元調教師。開成高を卒業後、豪州での修業を経て84年に栗東トレセンへ。厩務員、調教助手を経て2005年に調教師として厩舎開業。15日現在、JRA通算669勝でJRA重賞43勝(うちJRA・GI12勝)。ほかに海外でGI2勝、交流GI2勝。

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