JRA大混乱 市販エサに禁止薬物、156頭が競走除外

2019.6.16 05:07

 JRA(日本中央競馬会)は15日、前代未聞の土日156頭におよぶ競走除外馬の発生を発表した。禁止薬物のテオブロミンを含む飼料添加物を摂取した可能性があるためで、ファンも関係者も大混乱。JRAも対応に追われた。すでに馬番が決まっていた16日のメイン、函館スプリントステークス(GIII、芝1200メートル)は13頭中6頭が除外となり、7頭立てで実施される。

 公正競馬を掲げるJRAが、大混乱に陥った。競走馬の飼料添加物(サプリメント)から、興奮作用や強心作用のある禁止薬物のテオブロミンが検出されていたことが判明。飼料を口にした可能性がある馬を全頭検査するだけの時間はなく、公正確保の観点から土日で156頭もの馬が競走から除外された。

 15日の午前6時30分に、JRAが大量の競走除外を発表。実際には「競走除外」だが、想定されていないケースのためホームページでは「出走取消」と表示されるなど、JRA内部でも混乱した。また、競馬場を訪れたファンは「有力馬もたくさん除外されて、馬券の妙味がなくなった」、「被害に遭ったのは馬。関係者も大変でしょう」と一様に落胆。ネット上にもさまざまな憶測、批判が飛び交った。

 いったい、なぜ…。JRAはこの日、開催している東京、阪神、函館の3競馬場で会見を開いた。話を総合すると、異変が判明したのは14日の夕方。競走馬用の飼料添加物『グリーンカル』を販売した業者が厩舎関係者に対して、「(禁止薬物が検出されて)大変なことになった」と連絡して発覚した。本来なら理化学検査を受けて陰性と判断されたものだけが販売されるところを、検査を受けていないまま販売されたのが原因という。製品は回収された。

 『グリーンカル』はカルシウムを摂取する目的の添加物。今回は美浦6厩舎、栗東22厩舎が利用していたため、除外の憂き目に遭った。製造した日本農産工業(株)によると、現時点では原因を特定できておらず、製造工程を調査している段階。ただ、今回販売された製品には『競走馬理化学研究所の検査を実施しており、競馬法に指定される禁止薬物の陰性を確認しております』と印字されている。

 函館スプリントSで有力視されながら除外されたダノンスマッシュの安田隆行調教師(66)は、「(袋書きに)禁止薬物が含まれていないという説明があったので安心して使っていたのに、どうしてこんなことになったのか」と困惑の表情。JRAも「今回の業者に対しては当然、啓発、啓蒙を厳正にやっていきたい」とした。

 飼料の納入時期から、摂取した馬がすでに出走した可能性もゼロではないが、3着以内に入った馬などは検査を義務付けられており、陽性になった例はない。摂取した可能性がある馬は15、16日の両日で全頭検査を実施。公正保持に向けた取り組みが行われる。

 ただ、信頼されていた飼料の根底が揺らぐ一大事が起きたのは事実。関係者からは「納得がいかない」という不満の声も上がった。関係者もファンも巻き込んだ大混乱。業界一丸となっての徹底した再発防止策が求められている。

★飼料とサプリ

 競走馬は一般的に「カイバ」(飼い葉)といわれる飼料を食べている。厩舎によって一日に2度または3度に分けて摂取するのが一般的。人間の食事と同様、体調や身体面の課題に応じて分量や内容が調整される。『グリーンカル』は古くから利用されてきたカルシウム剤。厩舎関係者は「カルシウムが最初から配合されているカイバもあるけれど、(カルシウム剤は)サプリというよりも塩や醤油と同じで、普通に常備しているもの」と証言しており、信頼されていたことがうかがえる。

★残存効果は約10日間

 テオブロミンの残存効果は約10日間とされている。今週除外された馬や、宝塚記念(23日、阪神、GI、芝2200メートル)など次週の出走予定馬で『グリーンカル』を摂取した可能性がある馬は、検査で陰性と判断されれば今後の出走に問題はない。競馬開催への影響はないとみられる。

★記者の目

 JRAは競走能力に影響を及ぼす禁止薬物を定めている。8種類から始まり、今では105種類と取り締まりを強化。使える飼料も禁止薬物を含まないことが証明されたもの、と決めており、公正確保に力を注いでいることを喧伝してきた。

 それでいて、検査をしていない飼料添加物が売られていた。そのチェック体制の甘さに驚く。岩手競馬は薬物問題で開催休止に追い込まれた。大きな打撃を受けた例が近くにありながら、本当に真剣に薬物問題に取り組んできたのか、疑問を持たれても仕方がない。

 公に売られている飼料添加物を使用した関係者に非はない。函館競馬場で除外が決まり、肩を落とした調教師がいた。懸命に調整してきた関係者は被害者だ。

 一方で、前日夕に禁止薬物検出の可能性が出ながら、馬券の夜間発売を行ったことも解せない。楽しみに検討し、馬券を購入したファンをどう思うのか。除外馬を発表できなくても、夜間発売はやめてほしかった。首脳陣からファンへの丁寧な説明もないJRAの今回の対応は、残念だ。(レース部長・下村静史)

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