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2018.12.23 16:57

【居酒屋ブルース】有馬記念の3連複をズバッと決めた!

 【中山11R・有馬記念】

 「有馬記念で買う馬は決めているの」とトルコの桃ちゃんが言った。

 「分かってるよ、オジュウチョウサンだろ。桃ちゃんはここんとこずっと、この馬にぞっこんだからな」とスシ屋の政が応じる。

 「それにしても、なんで平地のGIでもオジュウチョウサンなんだい。まさか武豊が主戦だからってか。去年、豊のキタサンブラックで馬券を取ったから二匹目のどじょうを狙おうって魂胆かい」

 昨年の有馬記念。桃ちゃんはラストランを迎えるキタサンブラックの単勝馬券を有り金はたいて買い、現金を1.9倍に増やした。キタサンブラックにイレ込んでいる理由を政には明かさなかったが、私は知っていた。少し長くなるが、昨年のその部分を再録する。

 〈私は、桃ちゃんがキタサンブラックの単勝馬券をデビュー戦からずっと買っているのを知っている。新馬戦は2015年の1月31日。3番人気の単勝は790円もついた。そのとき、桃ちゃんは「ゴッティにクラシックの期待馬が現れた」と喜んでいた。桃ちゃんは、後藤浩輝の大ファンだった。だが、クラシックでキタサンブラックの背中に後藤浩輝はいなかった。2月末に他界していた。

 「キタサンブラックの2戦目に乗っていれば、こんなことにならなかったのに…。クラシックを勝てるかもしれないって未来に希望を持てたはずだから」

 そう言って桃ちゃんは泣いた。

 2月22日、キタサンブラックの2戦目の手綱を取ったのは北村宏司。後藤浩輝はその日、京都で騎乗していた。後藤浩輝の通夜で、北村が憔悴(しょうすい)しきった様子だったことを私はあとで知った。

 2月21日のことだ。ダイヤモンドSで、北村宏司騎乗のフェイムゲームが外側に斜行したことにより、後藤浩輝が騎乗するリキサンステルスの進路が狭くなり、前の馬に触れて転倒した。北村宏司は2月28日からJRAの開催16日間の騎乗停止となった。

 この落馬が、後藤浩輝の死の引き金になったのでは、と北村宏司は自分を責めたのではないだろうか。その北村宏司によって、キタサンブラックは菊花賞を制した。

 「ゴッティが、最後の直線で北村の背中を押してくれたのよ」と桃ちゃんはうれし涙を流した。桃ちゃんにとって、キタサンブラックは後藤浩輝の思い出と一緒に走っているのである。〉

 「でも今年は厳しいだろうな。平地のスペシャリスト相手に障害王が勝てるほどグランプリは甘かないぜ。『夢を買うのよ』なんて乙女チックなことは言わないでくれよ」

 「今年はミーハーな理由なの」

 「ミーハー?」

 政と私は思わず聞き返した。

 「そう。私、大谷翔平の大ファンなの。背が高くてすらりとしているし、頭は小さいし顔つきは優しいし。インタビューを聞いていても本当に素直で純粋って感じで、グラウンドに立つと打っても投げても一級品。その全部に胸きゅんなの。大谷君の代名詞は二刀流。競馬の世界で二刀流といえばオジュウチョウサン。夏から平地のレースに戻って連勝したから、もしかすると大谷君のようにハイレベルの二刀流が完成するかもしれないって。夢を買うというよりは、愛ね。無償の愛」

 「これまでは無償の愛で投じた馬券が当たって増えているようだけど、今回はちょっとなあ…。馬券はやけどしない程度にしときな」

 そういう政はなにを買うんだい。そう聞くと意外な馬名が帰ってきた。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 肩をたたかれて目が覚めた。後ろにアルバイトの桃ちゃんがいた。

 「飲み過ぎましたか?」

 夢を見ていた。トルコの桃ちゃんが出てきたよ。

 「酔っているんですか? 私はトルコ生まれじゃありませんけど」

 いや、トルコっていうのは国の名前じゃなくて…ほら…トルコっていう名称が問題になって名前を変えた風俗業界があるんだよ。ソープラン…。

 「エッチ! セクハラで訴えますよ」

 君じゃなくて、寺山修司の競馬エッセーによく登場していたトルコの桃ちゃんだよ。夢を見ている自分は寺山修司だった。それと政も出てきたよ。

 「呼びましたか?」と、カウンターの向こうにいる店主のカズマサが顔を上げた。

 カズマサじゃなくてスシ屋の政。寺山修司の競馬エッセーの常連のこと。知らない? スシ屋の政とトルコの桃ちゃん。

 「名前くらいは聞いたことがあるような、ないような…。こいつは絶対に聞いたことはないと思います。なあ、ガイ」

 「はい」

 ガイ君は二十歳になったばかりだもんね。でも、小説家志望なら寺山修司の作品は読んでおいたほうがいいよ。それと映画も。バイトばかりに精を出さず。「書を捨てよ町へ出よう」「田園に死す」「さらば箱舟」は必見だよ。実は夢に出てきたトルコの桃ちゃんは、バイトの桃ちゃんに似ても似つかない容姿だったけど、スシ屋の政は米大リーグ、ヤンキースの田中将大投手そっくりだったんだ。ここへ来る前に、競馬エイトの有馬記念特集号に掲載するためマー君の予想を聞いてきたからだろうね。

 「えっ、今年もマー君の予想を聞いてきたんですか!?」。スタッフの琢磨が食いついてきた。そういえば君の故郷は、プロ野球・楽天の本拠地の宮城県だったね。

 「アメリカに行ってからもファンです。マー君の予想を教えてください」

 それは競馬エイトの日曜版で披露しているので、買って読んでちょうだい。でも、名前が挙がった馬くらいなら教えあげられるよ。

 「よろしくお願いします」

 「では、これをどうぞ」

 カズマサがヱビスビールの中瓶の栓を開けようとしたから止めた。ビールをごちそうしてもらえるほどの話はできないからね。マー君が挙げたのは、馬番順で言うとモズカッチャン、サトノダイヤモンド、ブラストワンピース、レイデオロ、キセキなどだったよ。

 「なんだ人気馬ばかりじゃないですか」

 不満そうだね。でも、その中には無印にする馬もいるんだ。

 「どの馬ですか?」

 それはエイトを買って確認してよ。

 「そりゃ、そうですね」

 じゃあ、みんなの予想を聞こうかな。朝日杯フューチュリティSはみんな予想を外したようなので、誰から聞いても同じかな。

 「失礼ですね。私はなんとか3連複を少し引っかけました」

 さすが桃ちゃん、馬券のセンスがあるね。よく9番人気のクリノガウディーを買えたね。

 「◎グランアレグリア、◯アドマイヤマーズの2頭軸を買ったので、ヒモの8頭に入れることができました。3連複は3340円。いえーい!」

 「それに比べて居酒屋ブルースの馬券ベタといったら…」

 琢磨はイヤミだね。

 「だって、先週のエイトを見たら東の翔太郎トラックマン(TM)が『東西GI馬券バトル』で見事3連単4万5180円を的中させているし、西の穴予想のショータTMはクリノガウディーが本命。彼らの上司なのに…」

 部下を立てるのも上司の仕事なんだよ。そうそう、マー君の予想がコラムに載っている日曜版に、この2人の馬券対決もあるよ。“しょーた対決”だけにコラムの題名は「Show Time」。レイアウトは大谷翔平を意識したつくりになっているから、こっちも読んでね。じゃあ、朝日杯で4着だったファンタジストを本命にして馬券を取れなかった琢磨から有馬記念の本命馬を聞こうかな。

 「私の本命はモズカッチャン。『過去の本命は見直せ』という格言がありますが、さすがは有馬記念。過去に一度は本命にした馬ばかり。あえて1頭挙げるとすれば、モズカッチャンです。去年は大変お世話になりましたが、今年はまだお世話になってません。馬券になるチャンスは2回ありましたが、取れなかったのは自分のせい。絶好の3番枠に入って、やや過剰人気気味ですが、ワイド、3連複の軸で狙いたいと思います。相手は絞って、キセキ、レイデオロ、ミッキーロケットの3頭で勝負!」

 こういうときの琢磨は怖いんだよ。大阪杯も馬名を挙げた3頭で1~3着だったよね。次にカズマサの本命を教えて。

 「ブラストワンピースです!」

 いつもより力強いね。

 「まずは過去10年の年齢別成績を見てください」

 3歳 【4・2・2・23】
 4歳 【2・5・2・31】
 5歳 【4・2・4・37】
 6歳 【0・0・0・17】
 7歳 【0・1・1・10】
 8歳 【0・0・1・4】
 ※左から1着・2着・3着・4着以下

「3歳馬が勝率12.9%でトップです。今回出走する3歳馬はブラストワンピースのみ。次に前走のレースを見ると、菊花賞組が【3・1・1・5】と勝率30%、連対率40%、複勝率50%です。ブラストワンピースは、その菊花賞組。有馬記念は逃げ・先行組の成績がいいので、毎日杯のような前めでの競馬をすれば勝てると思っています」

 3歳馬はこの秋、年長馬と対戦したGIで3勝しているからね(マイルチャンピオンシップ=ステルヴィオ、ジャパンC=アーモンドアイ、チャンピオンズC=ルヴァンスレーヴ)。

 「ブラストワンピースもGI級の馬と評判だった馬ですからね」

 「こんばんは!」

 もりやさん、こんばんは。きょうは下のテーブル席で忘年会ですか。

 「はい。いよいよ有馬記念ですね。私の渾身(こんしん)の予想を披露してよろしいでしょうか」

 もちろん。教えてください。

 「では、私の有馬記念の本命は…ダラララララララララ」

 もりやさんの忘年会に参加しているマイちゃんとユミちゃん、それにヨシムーまでドラムロールに参加しちゃっているよ。あれ? 常連のカワウチさんまで加わってるよ。有馬記念の翌日はカワウチさんの61歳の誕生日ですね。おめでとうございます。

 「◎はキセキで、○はサウンズオブアース、そして▲はパフォーマプロミスです。キセキは単純にめちゃ強い馬だと思っているから。また、冷静に血統を見返すとキングカメハメハとディープインパクトの血が入っているので、まさに奇跡を起こせる馬のはずです。川田ジョッキーに決めてもらいましょう!」

 対抗と単穴は攻めましたね。

 「サウンズオブアースは、私が10年前においしい思いをしたアドマイヤモナークに似た雰囲気が直感でします。人気薄ですし、引退レースで度肝を抜かしてもらいましょう。パフォーマプロミスは世相馬券で選びました。今年はDA PUMPの『U.S.A.』がはやりました。パフォーマー集団のDA PUMPにあやかって選びました」

 有馬記念の結果は世相を映す鏡というからね。二十歳になったことだし、競馬ビギナーのガイ君も予想デビューしてみる?

 「ミッキースワローですね」

 どうして?

 「ヤクルト・スワローズのファンだから」

 「そんな理由じゃ当たんないよ」

 いやいや、カズマサくん、ビギナーズラックというのがあるからね。侮れないよ。

 「ありますかねぇ~。いや、ありますか。ありまだけに…」

 最後はダジャレかい。応援の単勝馬券を買っておいてあげようか、ガイ君。

 「よろしくお願いします!」

 最後に桃ちゃん、よろしく。

 「本命はシュヴァルグランにしました。昨年のジャパンCを制したボウマンさんとのコンビ復活はプラス材料です。去年の有馬記念は3着に負けましたが、直線で外の馬に寄られる不利があったので、まともなら2着はあったはず。ボウマンさんとのコンビでは春の天皇賞2着もあるので、通算【1・1・1・0】。外枠15番からの発走は少し気になりますが、シュヴァルグランを手の内に入れているボウマンさんが、ここも馬券圏に入れてくれると思います」

 みんなの予想が出そろった。

 見事に本命がばらけたが、居酒屋ブルースの本命にと残していたかのように1番人気必至の馬が出てこなかった。

 先週まで外国人騎手のGI勝ちは10週連続。ここ2週で書いているように、ルーレットで10回連続で赤が出ているときに「次も赤」と勝負するのがギャンブラーだそうだ。居酒屋ブルースはギャンブラーではないが、外国人騎手のGI制覇はまだ続くとみている。

 ジャパンCの出走馬については、競馬エイト土曜版での厩舎談話(「直撃厩舎リポート」)で「反動はない」という表現が目立っていた。2分20秒6というとてつもない速いレコードタイムが出たからだが、「反動はない」のオンパレードだと逆に怪しいと思ってしまう。反動というのは本番で走ってみないと分からないものではないだろうか。反動はあるとみて、本命馬はジャパンCに出走しなかった馬にする。

 ジャパンCに出走せず、鞍上が外国人騎手の出走馬はモズカッチャン(ミルコ・デムーロ騎手、前走エリザベス女王杯3着)、パフォーマプロミス(クリスチャン・デムーロ騎手、前走アルゼンチン共和国杯1着)、ミッキーロケット(オイシン・マーフィー騎手、前走天皇賞・秋5着)、レイデオロ(クリストフ・ルメール騎手)の4頭。その中から選ぶのは当然、天皇賞・秋を快勝し、2カ月というゆったりとしたローテーションで臨むレイデオロだ。

 ここで、知人から言われた「世相馬券」をひとつ。今年の「新語・流行語大賞」は「そだねー」。平昌五輪で銅メダルを獲得したカーリング女子、ロコ・ソラーレのエースの名前は藤沢五月。藤沢和雄厩舎のレイデオロが勝つサインだというのだ。

 外国人騎手の10週連続GI制覇を達成したのは、居酒屋ブルースの本命馬(グランアレグリア)に騎乗したクリストフ・ルメールではなくミルコ・デムーロ(騎乗馬はアドマイヤマーズ)だったが、有馬記念はルメールが勝って11週連続を達成するとみた。

 ◎⑫レイデオロ
 ◯③モズカッチャン
 ▲⑭キセキ
 ☆⑮シュヴァルグラン
 △⑥サトノダイヤモンド
 △⑧ブラストワンピース
 △⑩ミッキースワロー

《3連複》
 ⑫-③-⑥⑧⑩⑭⑮(5点) 各600円
 ⑫-⑭-③⑥⑧⑩⑮(5点) 各600円
 ⑫-⑮-③⑥⑧⑩⑭(5点) 各600円
 ③-⑭-⑥⑧⑩⑫⑮(5点) 各200円

 ※結果…世相馬券のほうは惜しい結果に終わりましたが、本職の予想はバッチリ。【居酒屋ブルース】は△⑧ブラストワンピース(3番人気)→◎⑫レイデオロ(1番人気)→☆⑮シュヴァルグラン(9番人気)を点数を絞り気味の3連複で仕留めて、2万9460円をゲットしました。関東競馬エイト担当の鈴木学部長は、今週末は競馬エイトの『有馬記念DAYスペシャル紙面』の作成でほぼ徹夜のデスマーチ状態でしたが、平成最後の有馬記念できっちり儲けて今夜はおいしいお酒が飲めそうです。おつかれさまでした。2018年のラストを飾るホープフルSの予想も期待しています。

鈴木学(すずき・まなぶ) 関東競馬エイト担当部長 

レース内容、騎手、厩舎

堅め

3連複

プロフィル

第1次東京五輪世代(第2次は2020年に誕生)。1993年2月にサンスポの競馬担当となり、2年間のブランク(運動部デスク)を挟んで競馬にどっぷり漬かっている。サンスポ記者時代は予想コラム「鈴木に学べ」を連載も、たまに「鈴木が学べ」に。

予想スタイル

「3連複の軸馬」を◎にしている。3連単の期待値は3連複の6倍だが、人気馬が1着だと6倍以下になることが多い。人気馬を軸にするのなら3連複の方が得という考え。

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