相沢師コラム・トレセン365日WEB版(36)~NF天栄場長のお墨付き・バレリオ

2018.12.6 16:21

 先週、2日の中山3Rでヤマチョウヴォイスが待望の初Vを挙げてくれました。1200メートルが合うようなので、次走はクリスマスローズS(12月22日、中山競馬場、2歳オープン、芝1200メートル)を予定しています。ウチの厩舎にとっては久々の勝利。もっとも、先週のラインアップを考えれば、もっと勝ちたかったというのが本音なのですが…(苦笑)。

 ヴォイスを担当してくれたのは、大ベテランの松本重春さん(67)。調教助手としてサクラチヨノオーやサクラバクシンオーにまたがり、厩務員としてもマンハッタンカフェを手がけた腕利きです。すでに定年退職されているのですが、ケガで休んでいる人間の代打(ヘルパー)としてウチの厩舎で約1年間働いてくれました。先週で契約期間が満了だったので、区切りの勝利になりました。

 ヴォイスが今年の夏にデビューしたときはカイ食いが細く、ゲートでもガタついてまともにスタートを切ることができませんでした。それでも、松本さんは「この馬、絶対に走るようになるから」と言い切ってくれたのです。ゲートを矯正するために松本さんが考えだしたのがプールでの調教。といっても泳がせる訳ではなく、プールに入る前の狭い通路で立たせる訓練を課したのです。その効果もあって、ゲートの狭い空間でも我慢できるようになりました。正直に言って、私では思いつけなかったアイデアです。カイ食いが細いなりにしっかりエサも食べさせる技は、もはや匠の世界といっていいですね。

 表現は悪いのですが、馬の世界も命令されたことしかやらない“サラリーマン”的な若い人間が増えてきました。今や、松本さんのような職人気質の腕利きは消えつつあります。ウチの厩舎に来てくれたことは他の従業員にとって刺激になりましたし、私も勉強させてもらいました。こうしたベテランの知識や技術が受け継がれないのはもったいない話。高齢化社会を迎えていることもありますし、現在の厩務員65歳定年制を見直してもいいのかもしれません。

 今週は9日中京12R・長良川特別(3歳上500万下、芝2200メートル)のバレリオが楽しみ。オークス3着など活躍してくれたアイスフォーリスの全弟です。昨年9月のデビュー戦で強い勝ち方をした後にガタッときて8カ月休み、今年5月の新潟戦(5着)の後もまた半年の休養を余儀なくされました。ただ、ようやく馬が芯からしっかりしてきた印象で今週の動きも上々。放牧先である福島・ノーザンファーム天栄の木実谷場長も「今回はいいですよ」と送り出してくれました。距離は延びても大丈夫ですし、本来の実力を発揮してほしいですね。

■相沢郁(あいざわ・いくお)

 1959年6月19日生まれ。北海道出身。麻布大学獣医学部で獣医師免許を取得。98年に厩舎を開業。初年度からウメノファイバーが京王杯3歳Sを優勝し、翌年にオークス制覇。2012、13年にJRA賞優秀調教師賞を受賞。これまでにJRA重賞16勝をあげている。趣味はお酒。

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