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2018.11.7 12:02

【藤代三郎・馬券の休息(60)】ミニ競馬新聞「ラップタイム」はいまも刊行されているのだろうか?(1/2ページ)

週刊Gallop誌上で好評連載中の作家・藤代三郎氏が、競馬にまつわる日常を氏のユニークな視点で綴る「馬券の休息」

週刊Gallop誌上で好評連載中の作家・藤代三郎氏が、競馬にまつわる日常を氏のユニークな視点で綴る「馬券の休息」【拡大】

 松本勝則という作家がいる。私が初めて読んだのは、『外れ馬券は止まらない 奇想天外馬券大作戦』(1989年/弘文出版)という本だった。30年も前のことであるのに、まだ鮮明に覚えている。

 いちばんは「レース中に競走中止の馬の隣にいた馬は凡走する」とい項だ。昭和49年から昭和62年まで、大レースで落馬した馬と、その隣にいた人気馬の着順が表になって掲載されているが、それを見ると驚く。大レースでこんなに競走中止した馬がいたのかという事実にまず驚くが、その隣の馬の着順にもびっくりする。

 たとえば昭和49年のオークスで、メジロトヤマが競走中止すると、その隣にいた1番人気のサクライワイがなんと16着。昭和58年のオークスでマチカネオトメが落馬すると、その隣にいたダスゲニーが1番人気で23着。例が古いのは仕方がない。なにしろ30年前の本である。出版当時からすれば、過去15年間のデータである。

 その理由として松本勝則は、ゲートに入るときに、馬たちは「がんばろうね」「うん」なんて話し合っているに違いない。その相手が競走中止したりすると、えっ、あいつ、大丈夫かなあと、動揺してしまうのではないかと、この本の中で推測している。

 動揺して負ける馬がこのようにわかるので馬券のヒントになる、と言いたいところだが、レースの前にはどの馬が競走中止になるのかわからないから、こんなデータは役に立たない、というオチがつくのも素晴らしい。

 松本勝則はこのようにいつも発想が素晴らしい。競走中止した馬の隣にいた馬の着順なんて普通は調べないだろう。おそらく自分の本命が負けた理由を調べているときに発見したデータなのだ。

 1992年刊行の『奇てれつ競馬データ ハチャメチャ馬券大作戦』(弘文出版)では、「三十日生まれの馬は大レースに勝てない?」「ラ行で始まる馬名は古馬の大レースで勝てない」という項が印象に残った。前者は昭和49年以降の大レースを勝った馬は148頭いるのに、まったく勝ったことのない唯一の日が30日生まれだという。後者は、4歳(現在なら3歳)の大レースは勝っても古馬の大レースは勝てない、という表が載っているので、本当だと納得。もちろんこれらは、この本が刊行当時のデータであるから、それから30年近くたっている現在では成り立たなくなっているデータかもしれない。

 しかし、そんなことをよく調べるよな、というデータが次々に登場するので、読み物として大変面白い。なんといま読んでも面白いのだ。そんなバカな、と言いたくなることの連続で、その意味では井崎脩五郎の系列に連なる競馬作家と言えるかもしれない。

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