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2018.10.11 16:13

相沢師コラム・トレセン365日WEB版(28)~ファイバー産駒の出世頭に・グレルグリーン

相沢郁調教師

相沢郁調教師【拡大】

 私事で恐縮ですが、奥歯に入れていたブリッジがダメになったので先週の金曜にインプラント手術を受けてきました。もちろん麻酔をかけて抜歯したのですが、術後はまあ痛いこと痛いこと…。ひと晩中、のたうち回るはめになりました。

 人間だけでなく、サラブレッドにとっても歯のメンテナンスはとても大事。外国には馬専門の歯科医がいますが、日本では獣医師が手術を行います。馬は2歳から4歳にかけて乳歯が永久歯に生え変わりますが、初期段階では歯が浮いてきます。そうなると噛み合わせが悪くなってカイ食いが落ちてしまうので、鉗子を使って思い切って抜いてしまうのです。その際は鼻をねじって口を開けさせ、何と麻酔もかけずに一気に引き抜きます。人間なら失神ものの激痛ですが、それにも耐えるのですから馬の辛抱強さには脱帽。いや、逆にすぐに痛がってしまう人間の方が情けないのかもしれませんね。

 歯の点検はトレセンにおいても重要です。人間が騎乗する際は前歯と奥歯の間にかけるハミでコントロールするので、歯の当たり方が変だと口向きが悪くなってしまうことも。厩務員さんは「変なよだれを垂らしていないか」「カイバをこぼさずに食べられているか」といったことに常に気を配っています。それこそ歯を食いしばって頑張る馬たちに、温かい声援をよろしくお願いします。

 今週は10月14日の東京1R(2歳未勝利、芝1400メートル)に出走するグレルグリーンが楽しみ。ウチの厩舎にGIタイトル(1998年オークス)をもたらしてくれたウメノファイバーが、20歳という高齢で産み落とした子です。孫の代からはヴェルデグリーン(重賞2勝)やサンリヴァル(皐月賞2着)といった活躍馬が出ているのですが、直子の成績はひと息。それだけに、この馬には出世頭としての期待をかけています。

 中山マイルの初戦は勝ち馬が強すぎただけで、中身のある競馬での2着。父がヴァーミリアンで適性は半信半疑でしたが、これなら芝でいけそうです。中間の状態はいいですし、しまいがしっかりしているので府中替わりも歓迎。悔しい競馬が続いた先週のうっぷんを晴らしてほしいですね。

■相沢郁(あいざわ・いくお)

 1959年6月19日生まれ。北海道出身。麻布大学獣医学部で獣医師免許を取得。98年に厩舎を開業。初年度からウメノファイバーが京王杯3歳Sを優勝し、翌年にオークス制覇。2012、13年にJRA賞優秀調教師賞を受賞。これまでにJRA重賞16勝をあげている。趣味はお酒。