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2018.9.12 12:00

【佐藤洋一郎・馬に曳かれて半世紀(52)】馬が友を呼び、酒が友を醸す~ビギナーズラックに酔った3連闘の夜

スポーツ紙記者No.1の健筆家と謳われるサンスポ佐藤洋一郎記者が自身の記者生活の集大成として送り出す「馬に曳かれて半世紀」

スポーツ紙記者No.1の健筆家と謳われるサンスポ佐藤洋一郎記者が自身の記者生活の集大成として送り出す「馬に曳かれて半世紀」【拡大】

 3連闘。北海道(函館・札幌)のような滞在競馬では、連闘の上にさらに連闘する馬も近年ではめずらしくない。初期のJCにこぞって参戦したオージー(豪サラ)やキウイ(新サラ)のなかには、連闘どころか週に2、3回(それも1000メートル→3000メートル)走ったキャリアを持つ馬もいた。そうした使い方が日常的と聞いて驚いたものだが、かくいう老いぼれ記者の3連闘はちょっと異常というか珍奇なまなざしを向けられそうな後ろめたさを感じ…たものの、考えてみれば開催場近くの居酒屋で毎週、決まって顔を合わせる(競馬の)お客さんが、自分をふくめて何組もいた。久しぶりに3連闘したとて恥ずかしくも、みっともなくもない…よな、とシズシズ暖簾をくぐった。そう、『百花亭』。

 岩ちゃんとマスターがニヤニヤというか、ヘンにうれしそうに話しかけてきた。

 「…読みましたよ、ネットで(ニヤニヤ)。友達に教えらて見たんですけど、岩ちゃん、いきなり有名人になりました(ニコニコ)」

 「これ、もうこれだけしか残っていないから。シメに、や(飲)ってください」 

 竹鶴17年。テンからこれを出されてたじろいだが、眠そうに見えたマスターに理由を聞くと、「ちょっと早起きして朝イチで中山に行きました。知り合いの馬が勝負! と聞いて複勝をちょっぴり」

 前日ハナ差4着で5万やられたのを取り戻してきたというので、いくらついたんですか?

 「3着ですからね、2・6倍」

 で、いくら?

 「いやあ、おとなしく10万円程度」 

 あれこれ買わず、1レース限定単・複1本勝負! のマスターの真骨頂が、竹鶴のシメに昇華していた。ひさしぶりに出店していた新潟美人のママにキムチは?! と小声で打診したら、「ああ、ちょっと切れているけど、あるにはあるから…」と姿を消して、しばらくして(自宅まで走った?)「はい、ちょっと漬けすぎていますけど…」 

 その漬け(発酵)すぎの、乳酸菌があふれている酸味の強いやつが、酒の肴にも腸内フローラにもズバッと効く。うまい!

 

 今回はカウンター奥のテレビの下の“特観席”が空いていて、秋場所初日の一番、休養明け初戦の稀勢の里を見上げた。

「稽古見てきたけど、休む前とは顔色も肌艶もまったく違っていましたね。ここは大丈夫でしょう」 

 地元の二所ノ関部屋(元松ヶ根部屋)とは懇意(常連)のマスターは相撲通でもあり、女将さんや松鳳山を伴って来店した親方(競馬好き)を紹介されて同席したこともある。

 「よし、キセ、差せ!」

 思わず馬語を口走ってしまったが、横綱は危なげなく“鉄砲勝ち”を決めた。ホッと一息ついてグラスを手にしたら空っぽ。「ちょっと、ミサキさん芋ロックお代わり!」

 ミサキをミユキと誤記した失態を岩ちゃんに指摘されて、「むかしの彼女の名前と混同したんでしょう(ニヤニヤ)」というマスターの追い打ちをも受けていたので、はっきりと皆にわかるように「ミサキ」と発音した。そのミサキさんが芋を運んできたときに、ほかにも空席があったのに、マスターがわざわざ(と思えた)男女のカップルを隣席に招き入れた。30代後半と20代半ばくらいのスリムなインテリ風の男と腰をおろしたときにかるく挨拶したが、男は恥ずかしそうに無言で女のおしゃべりに相槌を打っていた。

 実はこの2人、前日も来店していた競馬帰りの常連客で、初対面は自分だけということがわかってきた。

 「知ってました。わかっていたけど、恐れ多くて話なんてできなかったですよ」 

 なんと男の方は20年以上も前からのサンスポの読者で、「佐藤さんの予想もコラムもずっと見てきました」というからには、失礼ですが…。 

 「こういうことをやっています」と名詞のように差し出されてカードを見て、え?!と、のけぞった。馬の写真(ウオッカに酷似している)のわきに「うまみ ちゃんねる」とあり、裏にはTwitter:@umami_umami Mail:info@umami-ch.com とある。

 ということはその会社(?)のオーナーというか社長さん? それであなたは社員というかアシスタント?

 「はい、音楽をやっています」

 「なんかよくわからないけど、2人も若いですよね。あなたなんかまだ学生に見えるし」

 「音大を出て、もう何年にもなります」

 「で、社長さんは?」

 「48歳です」

 オーマイガア~。インクレディブル、ありえへん! といった感じで話に弾みがつき、音大OGのY・S嬢(記者とイニシアルは同じでしかも同姓)の衝撃的なビギナーズラックの話を聞かされた。彼氏(?)が立って彼女と席を替わり、目と鼻の先でその詳細を語るみめ麗しい女が、羽衣を着て天から舞い降りてきた女神のように見えてきた。

 競馬歴1年弱。「うまみちゃんねる」によって競馬を体験したのか、めくるめくような馬券体験によって馬チャンに引かれたのか。それはどうでもよい。携帯もアドレスも聞いているし、アフター競馬の飲み会の約束も交わしたし、ことの真相はいくらでもほじくり出せる。

 そのビギナーズラックは2017年12月9日の中山7R3歳上500万下に舞い降りた。浦和出身の16頭立て16番人気の(3)ランニングウインドが勝ち、2着12番人気(14)アドマイヤガスト、3着6番人気(11)グレイスニコと入線。

 単(3)2万5710円。複(3)5400円 (14)1300円 (11)350円 ワイド(3)(14)12万4860円 (3)(11)3万6560円 (11)(14)9400円 馬単96万2580円 3連複223万2180円 3連単2180万2320円

 JRA高配当4位にランクされる超配当を、「スガワラリュウイチ(菅原隆一)の単複とカッチー(田中勝春)とのワイド100円ずつ買って、300円が約7万円になった!」

 100玉3つで7万円自体がすごいけど、もしそのときY・Sがいたら、スガワラとカッチー2頭軸(3)(11)3連複総流しの1400円はプレゼントし、買わせていたし、自分も買っていた。ビギナーズラックというのは絶対にあるんだから。去年の今頃会っていたらなあ…。でも、あなたのようなフレッシュな競馬ファンがまだ増え続けているんだ。それを知ったこと、教えてもらったことが嬉しい。新しい馬友もできたことだし、遅ればせながらコングラチュレイション、乾杯!  

 馬が友を呼び

 酒が友を醸す

佐藤洋一郎(さとう・よういちろう)

 サンケイスポーツ記者。早大中退後、様々な職を転々とするなかサンスポの読者予想コンテストで優勝。71年にエイトの創刊要員として産経新聞社へ。サンスポの駆け出し記者時代に大橋巨泉の番記者に抜擢されたのが大きな転機に。季節・馬場・展開の3要素を予想に取り入れ数々の万馬券をヒットさせ、鬼才と呼ばれる。