【藤代三郎・馬券の休息(47)】「とりあえずビール」の時代は終わった?~新潟旅打ちの楽しみ方~

2018.8.8 12:16

 新潟の名酒八海山が、夏の間だけ販売している「特別純米原酒」というのがある。ぎんぎんに冷やして飲むと、それはもうおいしいと評判の酒だ。その夏期限定商品はずっと前から販売しているのかもしれないが、存在を知ったのは昨年だった。ところが昨年は飲む機会がなく、今年こそ飲むぞと新潟に向かった。

 別に新潟まで行かなくても通販で買うことが出来るようだが、新潟競馬場に行くことだし、市内で飲みたいと思うのは人情というものだ。どなたかのツイッターで読んだのか、それとも八海山の広告ページで読んだのか忘れてしまったが、飲み方はぎんぎんに冷やした酒をショットグラスに入れ、一息にクイッと飲むんだそうだ。日本酒だとちびちびと飲むイメージがあるが、そうではないと言う。日本人は「とりあえずビール」というのが合言葉のようになっているが、それを打破して、「とりあえず冷や酒を」というふうに変えたいと言う。おや、ということはホームページで読んだのか。

 というわけで、とにかく昨年は飲むことが出来なかった八海山の夏期限定「特別純米原酒」を今年は飲んだ。新潟駅前の店を予約して行ったのに、金曜夕方6時半の段階で残っていたのは4本だけ。噂通りになかなかの美味でした。もっとあったらもっと飲んで、ぐだぐだになっていたかも。

 ところで新潟はホントに米がおいしい。そうか、米がおいしいから酒もおいしいのか。ホテルイタリア軒という有名なホテルがあるが、そのホテルの朝飯がうまく、そういうホテルの朝飯だから美味しいのかと思っていたら、駅近くのビジネスホテルに泊まっても米が美味しいから、新潟はどこでも米はうまいのかも。

 今年はなぜかホテルがなかなかとれず、ようやく取ったのが通常なら3500円というホテル。繁忙期価格で1万円というホテルだったが、ここの朝食はすごい。食パンにロールバンだけ。あとはゆで卵と飲み物で300円。私らは別のホテルに朝食だけ食べに行ったが、ロビーからその朝食風景が見えるので何気なく見ていたら、若いカップルがきて、ロールバンを2個、トースターに入れた。ところが上部が焦げちゃったんですね。それを持って男の子が女の子のもとにいくと、「もうバカなんだから」とかなんとか言っちゃって(聞こえたわけじゃないので、台詞は私の想像だ)、なんだかとても楽しそうだった。一人で高価な食事を食べるより、たとえ貧しい食事であっても好きな人と食べるほうが美味しいのかも。

 今回は大勢で新潟に行ったのだが、そのうちの一人、アキラが日曜の朝に食べに行ったのが、バスセンターのカレー。新潟では有名なカレーで、朝8時に行ったら行列が出来ていたという。そこは立ち食い蕎麦の店であるのに、そのほぼ全員がカレーを頼むというから、すごい。その近くに、イタリアンというこれも新潟で有名なB級グルメを出す店があるが、こちらのオープンは朝10時というのでアキラは断念。そんなのを食べに行ったら競馬に間に合わない。これは焼きそばにミートソースをかけたもの。いや、アキラも私も食べたことはないのだが、そういうものであるらしい。

 私もそのカレーを食べに行こうかと思ったのだが、雨予報だったので(結局朝は降らなかったのだが)、近くの魚沼釜蔵に朝飯を食べに行った。駅前のホテルメッツの1階にある店で、夜は居酒屋なのだが、朝は朝食を食べることが出来る。メッツに宿泊する客でなくてもいいのだ(値段は宿泊客と異なるのだが)。ここに並んでいた味噌が美味しくて、帰りに駅の売店で売っていたものを買ってきたのだが、それが本当に同じものなのかどうか。まだ確認していない。

 食べたことがあるのが、そして今年も食べたのだが、「えび千両ちらし」。新潟名物の駅弁で、今年は競馬場でも売っていた。このネーミングなのに、えびの姿が見えない、というのがすごい。一面に卵が敷きつめられていて、それをめくるとまず鰻が現れる。えっ、鰻? と驚いていると、イカ、こはだ、とろろ昆布と現れて、最後に甘エビが現れる。タレカツ丼(これも新潟の名物だ)が600円なのに、この「えび千両ちらし」は1300円だから高価な部類に入るのかもしれないが、3日間の新潟滞在で食べたなかで「いちばん美味しかった」とはアキラの弁。

 新潟に行かれる方にぜひすすめたいが、日曜の帰りに駅前で軽く飲み,改札前の弁当屋を6時半に通りかかると残っていたのがたった2個。アキラがあまりすすめるものだから私らの仲間がその2個を買うと、あとから来た客が「えーっ、もうないよ」と嘆いていた。人気のある商品なので、ご購入はお早めに。

藤代三郎(ふじしろ・さぶろう)

 1946年生まれ。本名・目黒考二(めぐろ・こうじ)。明治大学文学部卒業後、76年に作家・椎名誠氏と書評誌「本の雑誌」創刊。ミステリーと野球とギャンブルをこよなく愛す。藤代三郎のほかにも群一郎、北上次郎など複数のペンネームを持ち、評論、執筆活動を幅広く展開。著書に「本の雑誌風雲録」「活字三昧」(いずれも目黒考二)や「冒険小説論」(北上次郎)。「戒厳令下のチンチロリン」や週刊ギャロップに創刊より連載している「馬券の真実」をまとめた「外れ馬券は人生である」などの“外れ馬券シリーズ”は藤代三郎として発行している。

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