ハンデキャッパーの理想は「1番人気が5倍以上」

2015.6.30 05:06

 今週開幕する2場の日曜メーン、福島のラジオNIKKEI賞と中京のCBC賞はともにハンデ重賞。そこで、競馬界のさまざまな話題に迫る『ズームアップ』は「ハンデキャッパー」を取り上げる。ハンデ戦の負担重量はどのようにして決められるのか。他にどのような仕事があるのか。JRAの山室賢治氏を直撃し、ハンデキャッパーという職業に迫った。 (企画構成・板津雄志)

 東西の主場がローカルに移り、いよいよ夏競馬が本格的に開幕。ハンデ戦は、昨年8月に行われたGIII北九州記念が3連単395万3810円の高配当となるなど、穴党にとって格好の狙い目となる。

 競馬で唯一、人の手によって負担重量が決められるのが、そのハンデ戦。日曜の夕方に特別登録が発表されてから、速やかにハンデキャッパーによる作業が始まる。

 「ひとつの競馬場に担当が3人おり、その競馬場で行われるレースのハンデ案を月曜昼までに各自で作成。それから3人で議論を行います」

 JRAのハンデキャッパーである山室賢治氏によると、今週の函館であれば、TVh杯、檜山特別の2レースのハンデ案を、担当する3人がそれぞれ作成して持ち寄って意見を交わす。時間にして1~2時間。合議によって決定する。発表は月曜午後3時。

 基本的にハンデは強い馬からつけていく。57・5キロなどの端数は「主に牡馬57キロ、牝馬55キロの基礎重量を超えるときに用いることが多い」と山室氏。上限は特にないが、「昔ほど各馬の能力差がないので、60キロ以上を課せられる馬はほとんどいなくなりました」。下限も規定はないが、「騎手の体格と健康を考えて、オープン、重賞競走は48キロ、1000万下、1600万下の条件では50キロが慣習」となっている。

 では、ハンデを決める材料とは何か。「直近はもちろん、過去の成績も全部考慮してメンバー同士を比較します。あとは距離、コースに芝、ダート…」と説明。「福島が得意だからといって1キロ増量というのはない。初モノ(初芝、初ダート、初距離など)についても、走ってもいないのにダメと決めつけられません」と考え方を明かす。

 ただし、新潟の直線芝1000メートルは例外だそうだ。「千直は特殊。この条件だけはすごく走るという馬が、芝、ダートの違い以上にいるととらえています。1200メートルで負けていても、千直ではハンデが重くなる馬はいます」。

 ハンデキャッパーにとって「ゴール前で横一戦が理想」という話をよく耳にする。だが、山室氏にはそれとは別に2つの理想がある。

 (1)「登録馬が全頭、このハンデなら勝負になると、出馬投票すること」

 (2)「ファンや記者の方が、どれが勝つか分からないと迷うこと」。具体的には「1番人気のオッズが5倍以上で、飛び抜けた最低人気もいないこと」

 パドックに行った際にはオッズを確認し、「もう少しハンデを重くしてもいいと考えたが、人気になっていないな…」などと考えを巡らせるという。こういったハンデキャッパーの思考を読むのも、競馬の楽しみのひとつかもしれない。

★メーンに多いハンデ戦

 今週はハンデ戦が4レース。そのうちラジオNIKKEI賞、CBC賞のほか、土曜函館のTVh杯もメーンとして行われる。次週もハンデ戦5レース中、7月12日(日)の七夕賞(福島11R)をはじめ4レースがメーンだ。

★8着でも0秒3差

 山室氏が「いいレースでした」と胸を張るのは、今年3月に中山で16頭立てで行われたハンデ重賞マーチS(ダ1800メートル)。1着マイネルクロップ(56キロ、6番人気)、2着イッシンドウタイ(56キロ、5番人気)、3着マスクトヒーロー(57キロ、1番人気)の3頭がタイム差なしでゴールを駆け抜け、8着ソロル(57.5キロ、2番人気)でも0秒3差だった。

★専用ソフト

 JRAには、ハンデキャッパー10人だけが使用するソフト『ハンデ台帳システム』がある。競走馬のメモを記入し、後日、必要になった際に検索できる仕組みだ。「パドックでイレ込んで発汗し、このときは力を出せなかった…などとメモ。負けた理由も考慮して、次のハンデ作成に生かします」と山室氏。ハンデ戦の重量は細かなデータの蓄積をもとに生み出されている。

★その他の仕事は?

 東西トレセンに勤務するハンデキャッパー(各4人)は、平地調教再審査や障害試験の審査も担当するほか、追い切りの観察、厩舎との意見交換などの情報収集も行う。さらに今夏の国際騎手招待『2015ワールドオールスタージョッキーズ(昨年まではワールドスーパージョッキーズシリーズ)』の出走馬のグループ分け(A~D)も仕事のひとつだ。

★レーティング作成

 ハンデキャッパーの仕事で、ハンデ作成とともに大きな柱となるのが、競走馬の能力を指数で評価する「レーティング」の作成だ。JRAでは重賞、オープン競走のレーティングを毎週発表(地方は交流重賞のみ)。また、国内だけでなく海外主要競走の日本案も作成しなければならず、ハンデキャッパー10人で分担する。

斤量差

 馬場状態によって異なるが、1キロは1600メートル~2000メートルで1馬身、0秒2に相当。短距離では半馬身、長距離では2馬身の差となる。

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