水はけ劇的に向上!大改修で中山の芝が変わった

2015.3.31 05:03

 皐月賞を控え、例年なら連続開催で傷んでいるはずの中山競馬場の芝コースの評判がいい。昨年の皐月賞後に芝コースの大改修が行われ、格段に水はけがよくなったことが大きな理由で、馬場管理技術の進歩も見逃せない。芝刈りをはじめ、裏方として競馬を支える馬場造園課の仕事に密着した。(企画構成・芳賀英敏)

 中山競馬場のコース整備を担う馬場造園課の根岸清隆課長は、4月19日の大一番に向けて気を引き締めている。

 「(造園課の)年間テーマは、皐月賞をいい馬場で行うことです」

 中山では通常は1月、3月~4月、9月、12月に開催があるため、大がかりな馬場改修作業は皐月賞後に限られる。つまり3冠初戦は最も悪い状態で行われるといってもいい。それをいかにいい状態に保つか…。

 「秋までの休催期間が勝負。そこでその後の一年間が決まりますから」

 昨年の皐月賞後に始まった大規模改修工事は通常の秋の中山開催分を新潟に振り替え、工期は8カ月近くにおよんだ。

 昨年12月に新装なった芝コースは大好評。雨の影響を受けたこの春の連続開催でも「少し硬くなってきましたが、内外の差がないので、馬は距離ロスのない内に密集しますね」と田辺騎手が証言するように、いい状態をキープしている。

 大規模改修のテーマは排水性だった。2012年度のデータで、中山はJRA全10場で最も透水速度が遅かったからだ。根岸課長は「土壌の排水性が一番の問題でした。馬場を掘りましたが、表面近くまで水が残っていました」と振り返る。

 改修したのは最も広い芝Aコースの内ラチを基準に、Cコース(Aコースから6メートル外に仮柵)使用時までの走路部分(幅は正面直線が18メートル、その他は11メートル)。排水能力向上の決め手は地面の深い位置にある砕石層だ。

 「石つぶを敷いてあります。その上に劣化しにくく透水性のあるシートを敷いて山砂の浸透を防ぎ、排水管も布設しました」

 内ラチ沿い(芝内・外回り)を1周する形で地下水路を張り巡らせ、直線坂下や消耗の激しいコーナー部分などには横方向にも布設。排水能力は劇的に向上し、全国トップレベル並みの透水速度を誇る競馬場に変身した。

 JRAは馬場のクッション性を重視し、芝コースの硬度を90G前後に調整している。

 「先人から引き継いだ安全への取り組みと経験の蓄積。そして技術の進歩。競馬場は馬も騎手も命をかけている舞台ですから、われわれも安全な馬場を提供しなければ」

 ファンからすれば、馬場はよくて当たり前。天気と芝という自然が相手で、求められる仕事のレベルは常に高い。競走馬の強力な蹄であいた穴の補修など作業は、競馬開催日の最終レース後はもちろん、週の半ばにも行っている。根岸課長は時間の許す限りコースを歩き、刻々と変わる馬場を観察して微調整を重ねている。今年の皐月賞は絶好の馬場状態で、例年以上に迫力ある戦いが繰り広げられそうだ。

★皐月賞最有力は弥生賞馬クラウン

 皐月賞の重要ステップレースは28日の毎日杯で終了。30日現在、最有力視されるのは同じ中山芝2000メートルのGII弥生賞を制覇して3戦全勝としたサトノクラウン(美・堀)だ。1番人気に推されたGIIフジテレビ賞スプリングSで2着に敗れたリアルスティール(栗・矢作)も、当時は展開面で不利があっただけに巻き返しがあっても不思議はない。

 2歳牡馬王者ダノンプラチナ(美・国枝)、札幌2歳Sの覇者で弥生賞2着のブライトエンブレム(美・小島茂)なども十分に争覇圏内だ。

★週末が雨でも馬場悪化の可能性低い

 中山は連続開催の2開催目に突入したが、28日の日経賞(芝2500メートル)を勝ったアドマイヤデウスのタイムはコースレコードにコンマ7秒差の2分30秒2(良)だったのをはじめ、速いタイムの決着が目立つ。

 脚質的には逃げ切りあり、直線一気の追い込みありと大きな偏りはないが、直線が310メートルと短いため外から追い込むには展開の助けも必要になる。予報では今週末の天気はぐずつき気味だが、よほどの雨量がない限り、影響はないとみていい。

★有馬Vジェンティルは馬場で参戦

 3冠牝馬ジェンティルドンナのラストランの舞台として選ばれたのが、リニューアルオープンしたばかりの中山で開催された昨年暮れの有馬記念だった。初コースだったが、石坂調教師は「馬場が良さそうなのでね」と参戦を決定。見事に有終の美を飾った。

馬場硬度

 移動式の測定器を馬場に持ち込み、6キロの重りを垂直に落下させてその反力で測定する。単位は「G」(衝撃加速度)。約20年前の中山競馬場の芝コースは120G前後と硬かった。1994年のデータではJRA全10場の平均値だったが、その後、順次競馬場の路盤改修工事を進めてきた結果、現在は90G前後。

中山の芝

 秋の開催以外は、野芝の上に洋芝(イタリアンライグラス)の種をまく“オーバーシード”が行われる。消耗の激しい部分はJRAの競走馬総合研究所が開発した『エクイターフ』と呼ばれる野芝を使用。土中の茎が密に絡まって回復が早く、掘れにくいという特性をもっている。野芝は暑さに強い特長があるが、寒い時期は枯れて茶色になるので見栄えが悪い。一方、洋芝は暑い場所には向かないが、寒い時期も緑を保て、生育状況に応じて種の追いまきも行われる。また、春の開催後、枯れた芝の処理も馬場造園課の重要な仕事だ。

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