お気づきでしょうか?鞭の使用は減っています

2015.3.17 05:04

 競馬界の話題に迫る新企画(随時掲載)の第2回。テーマは「鞭(ムチ)の使用制限」だ。JRAでは国際基準に従い、2012年から本格的に導入されている。騎手が鞭をふるってダイナミックに競走馬を追う姿は競馬の醍醐(だいご)味の一つだが、日本では連続して10回以内と決まっている。鞭の使われ方に注目すれば、今週のレースはもちろん、29日の高松宮記念など春のGIもファンの楽しみが増すはずだ。(企画構成・片岡良典)

 サンケイスポーツのレース成績欄とともに掲載している「できごと」の中で、制裁項目と挙げられている“鞭の使用”。動物愛護の観点から2010年に制定された国際協約ガイドラインに沿った使用制限が、11年に施行、翌12年から本格的に導入されている。レース中の鞭の不適切な使用を規制するのが目的だ。地方競馬でも同時期に採用されている。

 日本(JRA)は国際レース増設に伴って、07年3月に世界の競馬開催国・地域の中で2番目のパートII国から最高のパートI国に昇格しており、鞭に関する国際基準の導入は必然的だった。

 騎手はレース中(スタートからゴールまで)、連続する動作で10回を超えて鞭を入れると制裁の対象となる。制裁内容は毎年1月から1回目は戒告。2回目からは過怠金が科されて1万円、3回目は3万円、4回目以降は5万円。年末までの1年間でリセットされる。

 JRA審判部の久保厚(くぼ・あつし)審判課長は「外国では鞭の使用で騎乗停止になるケースもありますが、(国内では)以前に比べて制裁件数も少なくなりました。(鞭の使用に対する)各騎手の意識も高くなり、抑止効果にもなっています。今よりも厳しく(騎乗停止処分などを科したり)するつもりはありません」と説明する。

 鞭の使用頻度は、当該競馬場で裁決担当委員(3~4人)がパトロールビデオを参考に判断する。「制裁は直線での件が多いですが、対象は発走直後からゴールまで。連続10回以内で、2完歩(1完歩は四肢の送りで約8メートル)あけていれば対象にはならず、(馬の目先で鞭をちらつかせるだけで走る気を促す)見せ鞭もカウントしません。また(左右どちらかにヨレるなど)馬の癖(へき)を矯正するため、やむを得ず使用する場合は過失とは認めません」と久保審判課長。

 使用制限を現役騎手はどう受け止めているのか。今年でデビュー14年目の田辺騎手は「自分はあまり鞭を使う方ではないが、(過怠金などの)制裁対象になるので、みんなが意識するようになったと思う」と説明。20年目の柴田大騎手も「制裁が厳しいので乗り役は気を付けている。以前に比べて使う頻度が少なくなったと思う」と語る。

 本格導入から今年で4年目。ただ、10発までの制限があるからといって、ゴール前の叩き合いで2完歩あけるために鞭を持ち替えて僅差の2着に負ければ、制裁は免れても馬主や厩舎側が納得するかどうか。また、見せ鞭か否かが見極めがたい例もあるが、鞭を使用制限内で的確に使いながら馬の能力を最大限に引き出すため、騎手にさらなるレベルアップが求められることは確かだ。

★鞭の使用のガイドライン(禁止事項)

(1)馬がけがをするほどの過度に強い使用

(2)肩より上に腕を上げて振り下ろす

(3)反応(脚勢)のない馬に対しての必要以上の使用

(4)明らかに着順の大勢が決した後の必要以上の使用

(5)入線後の使用

(6)ひばら(脇腹)への使用

(7)過度の頻発使用

(8)頭部やその付近に対する使用

(9)鞍より前方(頭部など)での逆鞭

★外国での鞭の使用制限

 外国でも直線だけではなく、スタートからゴールまでが対象。フランスが8回、英国が7回となっている。ドイツは5回で、違反すれば1回目の制裁で過怠金が科される。2回目は騎乗停止となり、進上金(程度により50%~100%)が没収される厳しさだという。

鞭(ムチ)

 JRAではレースに使用できる鞭の長さは77センチ以下と決められている。主に、馬の闘争心をかき立てるための合図や、左右にモタれた場合の修正など扶助的な役割を担う。重さや色の決まりは特にない。柄の部分はグラスファイバー製の芯にゴムが巻かれ、その先は牛皮というのが主流で、価格は1本1万円~1万5000円ほど。最近は、鞭の先から25~30センチほどの部分に幅の広い緩衝材が入り、馬の痛みが軽減するタイプを使用している騎手もいる。

パートI国

 一定の規模で競馬を開催している国・地域は国際化の度合い、レース数、レベル、賞金水準などによってパートI、II、III(障害はパートIV)の3つに分けられている。日本はパートII止まりだったが、国際レース増設が評価されて2007年、国際サラブレッド競売人協会(SITA)によって英米仏独などが属するパートI国に承認された。

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